女子小中学生に声をかけて撮影した写真を展示する「声かけ写真展」の開催をめぐり、中止を求める声が相次いでいる。
2016年に開催された際は、「児童ポルノを助長する」などと批判を集めた。
保護者からの許可は得ず
声かけ写真展は、「街角で遊ぶ少女」をテーマに、中年男性が女子小中学生に声をかけて撮影した写真の展示・販売会だ。
2016年5月に第一回が開催され、公式サイトでは「声かけ写真はフィルム式コンパクトカメラが普及した1970年代から数十年にわたりアマチュア写真家に好まれたテーマで、中でも街角に遊ぶ少女は格好の被写体でした」と説明していた。
しかし、水着やブルマ姿の写真が展示され、被写体となった子どもの保護者からは撮影許可を得ていなかったため、「児童ポルノを助長する」「親から許諾を得ていないのはおかしい」と批判が寄せられた。
会場となった「IID 世田谷ものづくり学校」(東京都世田谷区)は会期後、展示内容の事前確認が不十分だったとして「多くの皆様に不快を与える内容の展示を許可したことに関して、深くお詫び申し上げます」と謝罪した。
第二回開催に向け資金調達
第一回と同じ主催者が現在、大阪での開催に向け、公式サイトで資金を募っている。約52万円の目標金額に対し、2019年5月31日時点で約31万円を集める。
さらに「第1回声かけ賞」と題し、展示作品の公募もする(現在は終了)。「過去現在を問わず、『大人が子供に声をかけて知り合い、仲良くなった風景』」を募集し、要項では
「こども(学齢期以下の人物)に声をかけて、承諾を得て撮影した、未発表の写真作品」
「被写体に声をかけ、本人の同意を得て撮影したものにかぎります。親権は同意を意味しません」
「応募作品が展に使用された結果、撮影者および被写体に対する不利益が発生した場合、すべての責任は、応募者が負うものとします」
などと明記する。
こうした動きに対し、ツイッター上で「#声かけ写真展中止しろ」「#声かけ写真展を止めろ」とのハッシュタグが作られ、署名サイト「Change.org(チェンジドットオーグ)」では開催中止を求める署名が立ち上がり、約1万4000筆(5月31日時点)集まっている。
主催者は批判を一蹴
主催者は雑誌『実話BUNKAタブー』2019年2月号で、ネット上での批判に反論している。
「親から許諾を得ていないのはおかしい」との意見には、「それは親が子供を自分の所有物と見ているからそういう発想になる。子供にだって人権はある」と一蹴。
「児童ポルノを助長する」との指摘には、「私はこの写真展では子供と大人のつながりを見ていただきたい。そこに性とかエロなんでない。性的に見て興奮するのは個人の自由ですけど、こちらとしてはそういう見方を求める気持ちはまったくない」との主張だ。
公式サイトでは、「本展の取り上げる写真はもとより法に抵触するものではなく、お子様からお年寄りまで年齢を問わず鑑賞していただける内容と自負しております」と法律上、問題はないとしている。
弁護士の見解は
レイ法律事務所の髙橋知典弁護士は5月31日、J-CASTニュースの取材に「全ての展示や販売等されている写真を確認したわけではないため断定はできませんが、刑事上、下着やきわどい水着姿の写真の展示・販売は児童ポルノ禁止法違反になる可能性があります」と話す。
児童ポルノ禁止法2条3項3号では、禁止される「児童ポルノ」を「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」と定める。
しかし、同号の適用があるかどうかに関しては、「街中で、子供から目線をもらい、引いて撮った写真であるとするならば、少なくとも性的な部位が強調されているといえるかどうかは判断が難しい面もあります」とする。
損害賠償等の民事上での責任についてはどうか。争点となるのは合意の内容だという。髙橋弁護士は「子供に写真の利用方法、すなわち『少女の写真だけを集め展示することや、来訪した人に販売すること』を明示して、包括的な合意を得たのかが疑問として残ります。さらに、子どもが内容を理解し、同意ができるとはいいづらく、親御さんからも許可を得ていないと合意に効力がないとされる可能性もあります」
以上を踏まえ、「刑事、民事のいずれにしても、子供の写真を親に許可なく撮影し、お金をもらって展示販売することは、違法性があると評価されるおそれがあります」とした。
J-CASTニュースでは主催者に文章で取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)