「近いから」「隙間あるから」身障者用スペースに車を停める人たち 車いすモデル明かす「本当に困った」実体験

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   車いす利用者の女性が、身体障害者用の駐車場に自動車を停めたところ他の車に不適切な駐車をされたため「乗り込むことができなくなった」という実体験をツイッターに投稿したところ、1万8000回以上リツイートされるなど反響を呼んでいる。

   その女性は、脊髄の病気のため車いす生活を送りながら「車いすモデル」として活躍する日置有紀(ひおき・ゆき)さん(29)。J-CASTニュースの取材に、長い時は「1時間以上」乗れずに待つこともあるといい、「本当に困るので辞めて欲しいなと思います」と胸の内を明かす。

  • 日置さんの車(右のピンク色のもの)の隣、斜線部分に別の乗用車が駐車している(写真提供:日置有紀さん)
    日置さんの車(右のピンク色のもの)の隣、斜線部分に別の乗用車が駐車している(写真提供:日置有紀さん)
  • 身障者用駐車場に停めている車と車の間に入り、駐車した車(写真提供:日置有紀さん)
    身障者用駐車場に停めている車と車の間に入り、駐車した車(写真提供:日置有紀さん)
  • 斜線部分の上に停められた車(写真提供:日置有紀さん)
    斜線部分の上に停められた車(写真提供:日置有紀さん)
  • 斜線部分に自転車が停められていたこともあるという(写真提供:日置有紀さん)
    斜線部分に自転車が停められていたこともあるという(写真提供:日置有紀さん)
  • 「車いすモデル」として活躍する日置有紀さん
    「車いすモデル」として活躍する日置有紀さん
  • 日置さんの車(右のピンク色のもの)の隣、斜線部分に別の乗用車が駐車している(写真提供:日置有紀さん)
  • 身障者用駐車場に停めている車と車の間に入り、駐車した車(写真提供:日置有紀さん)
  • 斜線部分の上に停められた車(写真提供:日置有紀さん)
  • 斜線部分に自転車が停められていたこともあるという(写真提供:日置有紀さん)
  • 「車いすモデル」として活躍する日置有紀さん

「自分の車に乗り込めない時の絶望感を毎回体験しています」

   日置さんは2019年6月5日ツイッターで、「今日もあったけど、身障者用駐車場の斜線部分や、身障者用駐車場が2台とも埋まってるのに、そこに停まってる車と車の間に無理矢理停めたりするの辞めて欲しい」と困惑した様子で投稿した。「これをされると、車に戻ってきた時に自身の車に乗り込む事が出来なくて待つしか無いから、身障者用駐車場が空いてない事よりキツイです」とその影響をつづっている。

   添付したのは駐車場の写真。日置さんが乗るピンク色の車が身体障害者用スペースに駐車しているが、地面に引かれた斜線部分に別の車が停まっている。斜線部分は車いす利用者の乗降用スペースを確保するためのものだ。日置さんは車のドアを十分に開くことができず、乗車することができなくなった。

   日置さんは「斜線部分に自転車が停まっていた事もありました。もうこの写真はほんの一部で、他にも沢山あります」と同様の経験をしたことが何度もあると投稿。移動に大きな支障が出ることはもちろん、「お店とかでサービスカウンターや店員さんに言って呼び出して貰っても、(編注:車の持ち主は)結局買い物を終えてから戻ってくるので、待ち時間が辛いです」「自分の車に乗り込めない時の絶望感を毎回体験しています」と、その都度歯痒い思いをすることを明かしている。

   こうした実体験の報告にツイッター上では、

「病院の駐車場でよく見る光景。なぜスペースが必要なのか考えたことないんでしょうね」
「よく見ます。『お店に、近いから。』との理由ですよね。なんの為に、広いスペースがあるのかを、考えていただきたいものです」
「自分もしないよう気をつけますがやってる方に注意出来るようになりたいです」

と同様の状況を見たことがあるなどの声が相次いだ。自身も車いすで生活しているというユーザーからは「僕も何度か経験しています」との声も届いた。

   バリアフリー社会進展のための映画制作やイベント開催などを手がける非営利任意団体「バリアフリー・フィルム・パートナーズ」(事務局・前橋市)の共同代表としても活動する日置さん。7日、J-CASTニュースの取材に応じ、「今回のようなケースはよく体験していた事もあり、他の方に知って貰えたら‥少しでも困っている事を伝える事が出来たら‥と掲載させて頂きました」と投稿の理由を明かす。

「早くて10分~15分くらい、長い時は1時間以上」

   日常生活で車は欠かせない。兵庫県在住で週4日ほど運転する。その中で今回のようなケースは「夕方等混雑した時間帯ですと、2週間に1度くらいのペースでありますし、見掛けます」という。

   買い物などを終えて駐車場に戻ってきた時に写真のような状態になっていると、店員などに声をかけ、持ち主に動かしてもらうように頼む。だが、

「店員さんにアナウンスをお願いして放送がされても、皆さんすぐには戻って来られないので、早くて10分~15分くらい、長い時は1時間以上暑い外や寒い外で待たされた事があります。それに、店員さんにお願いしても何もして貰えない事も結構ありました」

と待つ時間は短くない。

   身体障害者用の駐車スペースは台数が限られている。駐車時に空いていない時は「ドアを全開に出来くらいの隙間がある端っこの駐車場に停めたり、入り口から1番遠い駐車場に停めて歩いたりします」といい、場合によっては「身障者用駐車場が空くまでひたすら車の中で待っています」というケースもある。

   そうして駐車できた場合でも、今回のように今度は発車できなくなることがある。日置さんは身体障害用の駐車場利用について、こう訴える。

「身障者用駐車場のスペースは、車椅子の方々がドアを全開にして、乗り降りがスムーズに出来るように広く作られていたり、歩行が大変な方や妊婦の方等、限られた方々が停められたりするように作られているので、ただ『入り口が近いから』と言う理由や『車が停められる隙間があるから』と言う理由で停めるのは、本当に困るので辞めて欲しいなと思います。

特に障がいによっては、体温調節が出来ない方や、体調が不安定な方もいらっしゃるので、そんな状態でいつ戻って来られるか分からない車の持ち主を待っているのは身体的にも精神的にもキツイので、空いている駐車場に停めていただきたいなと思いますし、もしそこに停める必要があるならば斜線部分は避けて枠内に停めていただきたいです」

利用できない原因、42.3%が「一般車両(健常者)の駐車が多いから」

   東京都福祉保健局が公表している「障害者等用駐車区画の適正利用に関するアンケート調査」(2012年実施)では、外出の際に車いすを使用している障害者や高齢者などに利用実態を聞き取った結果をまとめている。そのうち「障害者等用駐車区画を利用できない原因」として、279人のうち、「障害者等用駐車区画の数が少ないから」が49.5%だったのに続き、42.3%が「一般車両(健常者)の駐車が多いから」と回答している。

   また同アンケートでは、障害者用駐車場をもつ施設の管理者468人への聞き取りも実施。「健常者の不適正な駐車があるか」の問いに「ときどきある」もしくは「よくある」と回答したのは、合わせて41.4%に上った。不適切な利用により、しかるべき人が障害者用駐車場を使えなくなってしまうケースは決して珍しくはない。

   障害者用駐車場を必要とする人が適正に利用できるよう、自治体単位で対象者(障害者、高齢者、妊産婦など)に「利用証」を交付する「パーキング・パーミット制度」の導入も進められている。国土交通省でも同制度の導入促進に向け、19年4月10日に「パーキング・パーミット制度事例集」を作成・公表。「車椅子使用者用駐車施設については、バリアフリー法により整備が促進されている一方で、障害のない人が駐車すること等により、障害のある人が駐車できない問題が発生しており、その適正な利用を促すための取組が求められているところです」と問題意識を示した。

日置さん「さり気ない優しさの方が嬉しかった」

   前出の日置さんは、今回の投稿に寄せられた反響の多さに「大変驚いています。沢山の共感の声、反対意見、知らなかったけど知る事が出来た、と言うお声をいただけて、私自身考えさせられる事が多かったです」と話す。一方、「見かけたら注意したい」との声が出たことについては次のように話した。

「『やってる方に注意出来るようになりたい』との事ですが、注意をした事で相手を怒らせてしまったり、手を出してきたりする方もいらっしゃるかも知れないですし、自分のせいで注意をしてくれた人が巻き込まれてしまうのはやはり嫌なので...相手に合わせて無理に注意をする必要は無いかなと思っています。

反対に、私が何度か同じような目に遭った時に、優しい方にお声掛けいただけて、重たい荷物を先に自身の車に積んでいただけたり、車を前に出そうか。と言っていただけたり、一緒に待って頂けたり、そう言ったさり気ない優しさの方が嬉しかったです」

   その上で「今回の投稿が、一人でも誰かの心に届いて、こう言う想いをする人が減ったり、知っていただけるきっかけに繋がれば私も嬉しいです」と願いを込めた。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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