政府が「リーマン・ショック級」の出来事が起きない限り2019年10月に消費税率の10%への引き上げを目指す中、野党からは「減税」を唱える声も出始めた。
仮に衆院解散の「大義」が消費税になった場合、与党側が主張するのは増税の先送りだ。野党としては、「減税」「廃止」を打ち出すことで、争点を明確にして差別化を図る狙いもありそうだ。
野党統一候補が「消費税率ゼロ」連呼する宮城県
消費税について最も先鋭的な主張を展開しているとみられるのが、山本太郎参院議員が率いる政治団体「れいわ新選組」だ。ウェブサイトの「政策」コーナーの最初に「消費税は廃止」と掲げる。廃止した場合、「初年度、物価が5%以上下がり、実質賃金は上昇、景気回復へ」と主張している。
党としては「増税凍結」を掲げる立憲民主党の候補予定者にも、事実上の廃止を唱える人がいる。比例区から立候補する、お笑い芸人のおしどりマコ氏(44)と、宮城選挙区(改選数1)で立候補するアナウンサーの石垣のりこ氏(44)だ。立憲など野党5会派は、32ある1人区のうち、30選挙区で候補者を一本化することで合意しており、宮城もこの中に含まれる。6月1日に仙台市内で行われた街頭演説では、応援に来た枝野幸男代表の至近距離で石垣氏は「庶民の生活を苦しめる消費税、私はゼロでいいと思います!」。野党統一候補の石垣氏が「消費税率ゼロ」と連呼することで、宮城県の有権者にとっては、消費税廃止が争点のひとつとして受け止められる可能性もある。
国民民主党の玉木雄一郎代表は6月5日の「リーマン・ショック級」の事態が起きた際の対応として、
「ひとつの政策手段として、消費税の減税ということも選択肢から否定するものではないと思う」
と述べた。
反増税候補を支援する市民グループも
消費増税反対や減税を唱える人を組織的に応援しようという動きもある。「反緊縮」を主張する市民グループ「薔薇(ばら)マークキャンペーン」だ。同キャンペーンが掲げる6つの認定基準のうち3つ以上を自分の政策として掲げ、認定基準に反する政策や、人種差別的な政策がなければ、「薔薇マーク」候補に認定される。審査基準のひとつ目が
「消費税の10%増税凍結(むしろ景気対策として5%に減税することが望ましい)」
というものだ。4月の統一地方選では、52人の候補が「薔薇マーク」に認定され、そのうち21人が当選。参院選の立候補予定者では、6月6日時点で山本氏ら3人が認定されている。
ただ、野党でも消費減税に極めて批判的な声はある。立憲民主党会派の岡田克也衆院議員は4月19日、国会内で記者団に対して、消費減税や廃止を掲げる候補者を「論外でしょうね。税制のことをどう考えているのか」と一蹴。
「私は消費税の引き上げは必要だと思うが、将来、10(%への引き上げ)の後を考えたときに、所得税や法人税についても、やっぱり(引き上げの)議論の対象にすべき」
などと持論を展開した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)