金与正氏「謹慎報道」とは結局何だったのか 健在確認、しかも「昇進」説まで

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩委員長の妹で、党第1副部長の与正(ヨジョン)氏の動向が2019年6月4日、国営メディアで報じられた。

   与正氏をめぐっては、つい数日前に韓国メディアが「謹慎説」を報じたばかりだ。だが、国営メディアが報じた写真によると、与正氏は正恩氏の2つ隣の席でマスゲームを観覧。他の幹部よりも「上座」で観覧したことで、序列が上がったとの見方も浮上している。

  • 久々に金与正氏(左から2番目)の動向が確認された(写真は労働新聞から)
    久々に金与正氏(左から2番目)の動向が確認された(写真は労働新聞から)
  • 久々に金与正氏(左から2番目)の動向が確認された(写真は労働新聞から)

日本の報道が一端、との見方もあったが

   与正氏をめぐっては、4月11日に開幕した最高人民会議を最後に動向が確認できなくなっていたため憶測が広がり、朝鮮日報が5月31日に「謹慎」説を指摘していた。不調に終わった2月の米朝首脳会談の責任を問われた、という見方だ。

   同紙の記事では、与正氏が「外部活動を極度に自制している」として、その理由のひとつとして「外交消息筋」による「結核にかかったという話も出ている」といった健康不安説を挙げた。もうひとつの理由は、「消息筋」による「ハノイ会談で灰皿を持って正恩氏の世話をする場面が日本のマスコミに露出し、北朝鮮内部で『不適切な行動』だという指摘が相次いだ」ことだ。正恩氏がこういった声を気にして「『自重しろ』という指示を下した」というわけだ。

   この説は、正恩氏が6月3日に平壌のメーデー・スタジアムで開幕した大マスゲーム・芸術公演「人民の国」を観覧したことを国営メディアが6月4日に報じたことで、完全に覆された。国営メディアが配信した写真では、観戦席の中央には正恩氏が座っており、向かって左には妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏。その左が与正氏、さらに左に党副委員長のリ・スヨン氏が座っている。こういった席次では、正恩氏に近いほど序列が高いと考えられているため、韓国メディアでは「序列が上がった」という指摘も出ている。

朝鮮日報、「謹慎説」覆った経緯解説せず

   この与正氏の動向は、「謹慎説」を報じた朝鮮日報も報じた。同紙の記事では、与正氏について「最高人民会議後の姿を見せず、謹慎処分を受けた推測が出ていた」と経緯を説明した上で、席次について「政治的序列がさらに高まったのではないかという分析も出ている」と報じている。「謹慎説」が覆った経緯に関する解説はなかった。

   朝鮮日報は、与正氏の「謹慎説」を報じた記事で、対米交渉を統括していた金英哲党副委員長(統一戦線部長)が「『革命化教育』(強制労働と思想教育)を受けている」と報じていた。だが、国営メディアは6月3、4日と連続で金英哲氏の動向を伝えており、健在が確認されている。朝鮮日報は、情報機関OBの話として、

「金英哲氏に対する懲戒処分が早期に終わったのかもしれないし、国際社会の目を意識して、革命化措置中の金英哲氏を急いで登場させた可能性もある」

という分析を伝えている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

姉妹サイト