横浜市南部を走る無人運転の新交通システム「シーサイドライン」の逆走事故をうけ、シーサイドラインは運休が続いている。原因は運営会社や国の運輸安全委員会が調査中だが、複数のメディアが車両側の自動運転システムに問題がある可能性を指摘している。
無人走行の新交通システムに注目が集まる中、東京都内の「ゆりかもめ」などこのシステムを導入している数路線の運営組織に対応を聞いた。
シーサイドラインは全線運休
2019年6月1日夜の事故をうけ、シーサイドラインの運営会社「横浜シーサイドライン」は2日未明に会見を開き、三上章彦社長が「逆走することは想定していなかった」「早急に原因究明し、再発防止に努めていきたい」などと話した。2日に続き3日も朝から全線で運休。運行再開のめどは立っていない。
原因究明はこれからだが、「車両側のシステムに問題か」(2日、朝日新聞ウェブ版)といった可能性を指摘する記事を複数のメディアが報じている。自動運転システムの装置は駅側にも車両側にもつけられている。今回の事故は、進行方向を切り替える新杉田駅で発生した。
横浜シーサイドライン社のサイトでは、自動運転システムに関して「ATO装置(自動列車運転装置)」と「ATC装置(自動列車制御装置)」を説明している。
ATOについては「『ATO装置』と呼ばれる運転士の役目を果たしている装置を車両に搭載し、運行管理装置に予め登録されたダイヤに従い、『ATO装置』に記憶された走行データ(加減速・走行速度等)に沿って出発駅から次の駅、そしてまた次の駅...終着駅と自動で運転しています」とあり、ATCでは「シーサイドラインは、車両の『ATC装置』により制限速度を超えないように、また先行列車に異常接近しないよう制御(ブレーキを掛ける)するシステムになっています。(以下略)」としている。
新交通システムとは、「ゆりかもめ」サイトによると「ゴムタイヤ式の小型軽量車両が、専用の高架軌道を自動制御によって走行する中量輸送交通機関」のこと。
「ゆりかもめ」など、ホームに係員を配置
新交通システムのすべてが無人の自動運転方式を採用している訳ではなく、採用しているのはシーサイドラインや都内の「ゆりかもめ」(東京臨海新交通臨海線)、「日暮里・舎人ライナー」、大阪市の「ニュートラム」、神戸市の「ポートライナー」「六甲ライナー」などの路線が知られる。J-CASTニュースが3日、横浜シーサイドライン以外の数社・自治体に対応状況について質問した。
「ゆりかもめ」社の総務課によると、進行方向を切り替える折り返し駅のホームに係員を配置し、万一逆走などトラブルがあれば、緊急停止ボタンを押せる態勢を3日から取っており、当面続ける予定。
「日暮里・舎人ライナー」を運行する東京都交通局では3点の対策を回答した。(1)試走線(路)を使っての特別走行点検を全車両で実施(今週内に完了予定)、(2)折り返し駅のホームにラッシュ時、係員を配置(走行点検終了まで)、(3)ATO装置間の通信状況の動作確認などを行う。
また、「ニュートラム」を運行する大阪メトロ(大阪市高速電気軌道)の広報担当者は、「現場担当者らに注意喚起した」「(システムの点検などは)原因が分からない現状では、具体的な対応策は取れない」と回答した。
神戸の2路線を運行する神戸新交通も3点を回答。(1)車止めを設置している始発駅(3駅)での出発時、係員による進行方向のモニター監視を強化するよう指示を出した(2日から)、(2)上記3駅のホームに係員を(利用者の多い7時から19時まで)配置し、万一の際に緊急ボタンを押せる態勢を取った(3日午後から)、(3)車両に搭載しているATO装置の全車両特別点検を順次始め、点検を数日内(ポートライナーは5日まで、六甲ライナーは6日まで)に終わらせる。
運行については、確認できた範囲の全路線が通常通り行っている。