20代男性の5人に1人が就活中にセクハラを受けたことがある――こんな調査結果を連合が発表したことに対し、ネット上で驚きの声が上がっている。
女性のセクハラ被害は、度々報道されている。対する男性の状況はどうなっているのか、各大学や労組に話を聞いた。
「性体験などを聞かれた」「性的な噂を流された」
「性体験など性的な事実関係を聞かれた」。連合が2019年5月28日に発表した調査結果によると、20代男性からこんな回答が多く出た。
この「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査」は、19年5月8、9日に20~59歳の有職男女1000人を対象にネット上で行われ、就活した800人強のうち1割で就活中にセクハラ経験があると答えた。
うち割合が最も高かったのは、なんと20代男性だった。
就活した109人のうち21.1%も占めており、次いで割合が高かったのが、30代女性の15.5%となっている。
セクハラ経験のある20代男性23人にその内容を聞いたところ、採用面接やOB訪問などの機会で、人事担当者やリクルーター、OBらから前出の性体験などの質問があったとの答えが最も多く、43.5%を占めた。次いで、「性的な冗談やからかい」「個人的な性的体験談を聞かせる」「性的な内容の情報(噂)の流布」がいずれも30.4%になっている。
セクハラを受けたことの影響としては、「就職活動のやる気がなくなった」が56.5%と最も高く、深刻なモチベーション低下につながっているようだ。次いで、「就職活動を長期間休んだ」「就職活動を短期間休んだ」がそれぞれ30.4%、26.1%も占めた。
この調査結果がニュースになると、コメント欄やツイッター上で驚く声が次々に出た。
各大学のキャリアセンターでは、男性の相談はないと言うが...
「男性の場合はどんな被害か知りたい」といった声が上がったほか、「下ネタの強要とかもセクハラだから」「結婚に関する質問はセクハラだろ」「根底として『男性ならいいだろ』という感覚がある」などの意見も出ていた。
ネット上では、真偽の程度は分からないものの、具体的な体験談も書き込まれている。人事部長に「キミ彼女いないだろ。ふん、だろうねぇ」と言われた、行きたくもない風俗に付き合わされた、何社かで「何故結婚していない?」と聞かれた、などだ。
そこで、各大学のキャリアセンターにJ-CASTニュースが取材すると、ある大手私立大では、こう答えた。
「女性から相談はいくつかありますが、男性からはありませんので、事例は把握してないです。もしかしたら、相談するのは恥ずかしいと思っているのかもしれませんね」
別の大手私立大でも、こう言う。
「報道で気になって、相談履歴を調べてみましたが、この3年間で男性からのセクハラ相談は来ていませんでしたね。すべて女性の相談で、男性のは聞いたことがありませんので、潜在的な悩みがあるのかも把握しようがないです」
文科省が2019年3月にまとめた「就職・採用活動に関する調査(大学等)」報告書によると、女性からも含めて就活セクハラの相談を受けたと回答した大学は、18年度は5%に留まっている。うち9割の大学が相談件数は5件以下だったと回答しており、男性からの相談は、ほとんど来ていない可能性がありそうだ。
「『男性ならいいだろ』とみなして、傷ついた人たちも多い」
とはいえ、20代男性なら、第2新卒やキャリア採用で就活をした人も多いかもしれない。とすると、学生よりむしろ既卒者の方がセクハラ被害に晒されている可能性も考えられる。
1人でも入れることをうたい、東京都内に約2200人の組合員がいるという全国一般労働組合東京南部では、中島由美子執行委員長が次のように取材に話した。
「就活中の人からのセクハラ相談は来ていません。しかし、職場では、男性上司や同僚から性的な言動を受けたり、『それでも男か』と言われたりすることが起きています。ですから、就活の場で男性がセクハラを受けたとしてもおかしくはないでしょうね」
男性がセクハラを受ける場合、加害者は女性や男性もあると中島委員長は言う。
「男性が女性に言うとセクハラとされる言動も、男性に言うとそうだと認識されていないのだと思います。もちろん、女性が男性に言う場合もあります。深刻なのは、風俗に誘うケースです。嫌な人もおられますので、無理強いしてはいけません。『男性ならいいだろ』とみなして、傷ついた人たちも多いんですよ」
男性へのセクハラが注目されるようになった背景については、こう指摘する。
「昔からあった言動だとは思いますが、女性が声を出すようになって、男性も意識が変わってきたのでしょう。セクハラを受けるのは、男性もやはり不愉快だと思うようになったということだと思います」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)