トランプ米政権が中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)と米国企業との取引を事実上禁じたことで、日本の企業や消費者にも影響が生じつつある。
大手携帯電話3社がファーウェイの最新スマートフォンの発売延期などを決めたほか、東芝はファーウェイ向け部品の出荷を一時停止した。「米国の排除対象は中国の他のハイテク企業にも広がる可能性がある」(アナリスト)との見方もあり、混乱の行方を懸念する声は多い。
対応に一気に動き出した日本企業
米政権はファーウェイの製品が中国政府のスパイ行為に利用されていると強く批判してきた。2019年5月上旬に中国との貿易協議が不調に終わると、安全保障上の脅威があるとして、部品やソフトを提供しないよう米企業に求める事実上の禁輸措置を発動。これを受け、米グーグルがファーウェイに対し、スマホ向けの基本ソフト(OS)「アンドロイド」の提供を停止したと伝えられると、関連する国内企業も一気に動き出した。NTTドコモが今夏に発売予定だったファーウェイの新商品「Pシリーズ」の予約受け付けを停止したほか、KDDI(au)とソフトバンクも発売延期を決めたのだ。
他方、ファーウェイと取引があるメーカーにも相次ぎ動きが出ている。ファーウェイのスマホ向け部品を製造しているパナソニックは、禁輸措置に該当する商品の取引を中止する方針を固めた。東芝も部品の出荷停止に踏み切った。
「ファーウェイのスマホは品質がよいわりに、値段は安いとして日本の消費者にも評価されている。商品の販売が制限されればデメリットは小さくない」(スマホ業界関係者)と、消費者への影響を心配する見方が広がっている。
中国のハイテク企業全般を狙っている?
また、ハイテク業界に詳しいアナリストは「米政権は中国のハイテク企業全般を狙っていると見られ、今後、圧力が向けられるのはファーウェイにとどまらない可能性は高い。何が禁輸対象になるかなど、日本企業は慎重に見極めないといけない」と話す。実際、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字施術(ハイクビジョン)に対する禁輸措置が検討されているとも伝えられており、企業も油断できない状況だ。
しかも、企業が不用意に取引中止などに踏み込んだ場合、ファーウェイから「契約不履行」などとして訴訟を起こされる危険もある。米国と中国との貿易協議が急展開し、米政権によるファーウェイ攻撃が急速に収まる可能性も否定できないなど、先が読めない中、米中の板挟みになった格好の企業の困惑は深い。
米国がファーウェイの排除に動き出したのは、安全保障上の懸念に加え、ファーウェイが次世代通信規格「5G」で世界を席巻しそうな状況にあり、ファーウェイの勢いを止めたいとの思惑があるともみられている。6月下旬に大阪で開催される主要20か国・地域(G20)首脳会議で米中首脳会談が開かれて一定の妥協に達する可能性も取沙汰されるが、「米中間の覇権争いが根底にある以上、根本的な解決は難しいだろう」(アナリスト)との見方も強く、ファーウェイ問題が長引くことへの不安は広がっている。