当事者や経験者団体「『ひきこもり』への偏見の助長の懸念」
ひきこもりの当事者や経験者らでつくる「一般社団法人ひきこもりUX会議」は31日、「川崎殺傷事件の報道について」と題した声明文を出し、マスコミ関係者らに要望を行った。
声明文で同会議は、川崎市による会見で、「長期間仕事に就かず、ひきこもり傾向にあった」「同居の親族からおこづかいをもらっていた」などの内容があったことについて、
「これらが事実であったとしても、ひきこもっていたことと殺傷事件を起こしたことを憶測や先入観で関連付ける報道がなされていることに強い危惧を感じています。
『ひきこもるような人間だから事件を起こした』とも受け取れるような報道は、無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長するものだからです」
と懸念を示した。以前もひきこもりがちな状態の人物が刑事事件を起こしたことをめぐって、「メディアで『ひきこもり』と犯罪が結び付けられ『犯罪者予備軍』のような負のイメージが繰り返し生産されてきました」と指摘。「社会の『ひきこもり』へのイメージが歪められ続ければ、当事者や家族は追いつめられ、社会とつながることへの不安や絶望を深めてしまいかねません」と訴えた。
ひきこもり当事者や本人の家族が高齢化し、生活上の問題を伴う「8050問題」にも言及。声明文では「『8050問題』への誤解を引き起こす」と問題提起し、「今回の事件と関連づけて『まさに8050問題』と表現することも適切ではないと考えます」と見解を示していた。報道をする際は、「『専門家』『有識者』だけではなく、ひきこもり当事者・経験者の声を取り上げていただきたくお願い申し上げます。当事者不在で『ひきこもり』が語られ、実態に即さないイメージが拡大していくことは、さらなる誤解と偏見を引き起こします」と求めていた。
J-CASTニュースでは31日、同会議の恩田夏絵代表理事に取材をした。川崎出身だという恩田さんは、「地元でこういう事件が起こることは非常に悲しい」と声を落とす。川崎市の会見後、「ひきこもりと事件が結び付けられて報道がすごい勢いで広がっていった」といい、
「これまで何か凶悪犯罪が起きて、犯人がたまたまひきこもりで、『ひきこもり=危ない人たち』と見られてきたのが長いことある。『ひきこもり=危ない、なってはいけないもの』みたいなイメージが当事者たちを苦しめている。事件をきっかけにひきこもりへの偏見が広がるのは避けたい思いがあって、声明文に書かせて頂きました」
と語った。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)