「動物のお医者さんからのお願い」――ツイッター上で、あるユーザーが「熱中症対策」として病院にペットを連れてくる際、キャリーケースに保冷剤や凍らせたペットボトルを入れてきてほしいと投稿し、「情報ありがとうございます」「忘れていた。思い出してよかった」などの反応があがっている。
投稿したユーザーは都内の動物病院の院長で獣医。J-CASTニュース編集部の取材に、「病院に来るのに新たな、しかも命に関わる病気になってどうするの」という悲鳴に近い想いがあったと語った。
ペットを運ぶ「ケース」に保冷剤を
院長は「動物のお医者さんからのお願い。暑い日に犬や猫や、特にウサギを病院に連れていく時は、キャリーケースに保冷剤を入れてください。ペットボトルに水を入れて凍らせたものでもいいです。ホントにお願いします」と投稿。「あくまでお願いというか、頼むから!」という想いから注意喚起に至ったという(保冷剤は昔のアイスノンなどはエチレングリコールという毒物物質が入っているため危険。食品用は大丈夫、とのちに補足している)。
2019年5月25日につぶやかれた、この投稿内容はわずか数日で9500リツイート以上され、「そうだよね、サウナ状態になっちゃう」「あの狭いケースに何もなしに入れられてたら移動中に茹でられそう」と連日の猛暑で動物を気遣う声のほか、「今日は真夏日の中動物病院に行きました。キャリーの中には保冷剤をタオルでくるんでタクシーで移動です」などペットを飼うユーザーの熱中症対策の声もあがった。
今年の5月は異例の暑さ。26日には北海道佐呂間町で39.5度を観測した。都内で犬や猫、うさぎなどを診察する、この動物病院の院長に28日、電話で話をきくと、
「(飼い主がペットを病院に運ぶ時)犬は歩きや抱っこが多いです。小型犬はケージのこともあります。猫はケージですが、本当に色々な種類のケージがあり、見た目を重視した結果、通気性が悪いものを見かけることがあります」
「ウサギはウサギ用の布バッグが多いですが、あれも熱がこもります。スノコがついているので、その下に保冷剤をタオルなどでくるんで入れるといいと思います。ただ布や紙をかじって食べてしまう子が時々いますので、犬や猫、うさぎを問わず命にかかわるので要注意です」
と、来院する際にペットをどのように運べばよいかを説明した。
ペットの熱中症、判断ポイントは?
また、熱中症で動物が死亡するケースもあると院長は語る。
「随分前ですが、真夏の引越しで、ケージに入れっぱなしだったらしく、熱中症で瀕死の猫が来院したことがあります。あとは、帰宅したら亡くなっていたという報告を受けたこともあります。クーラーの故障とか停電とか、仕方ない場合もありますが、ほとんどは飼い主さんが気をつければ防げるものだったのではないかと思います」
「昨今の暑さで、死に至らないまでも、熱中症は確実に増えていると思います。こちらが気をつけていても、想像を上回る暑さですので」
と過去の事例をあげつつ、飼い主側の対策を求めている。
また自宅等でペットが熱中症だと判断できるポイントについて、
「犬は開口呼吸(ハアハアという呼吸)が長く続くようであれば高体温になっている可能性があります。猫の場合は、口を開いて呼吸する動物ではないので、猫がハアハアしていれば、それは明らかに異常です。ウサギはぐったりした後、あっという間に亡くなってしまうことが多いようです」
と解説した。
またウサギについては特段の注意が必要で、
「ウサギは寒さに耐えるような毛皮を持っていますので、暑さには本当に弱いです」
「わたしの病院では、夏場は病院に来なくていいように、2か月に一度の爪切りを梅雨時の涼しい日にして、次は9月頃という風にしています」
と暑い中来院させないために時期をずらすという。
「どうしても連れていかなければならない時は、保冷剤を入れて、なおかつ近距離でもタクシーで移動するくらいの用心が必要だと思います」
ペットお留守番の時の熱中症対策
飼い主の中には日中ペットに「お留守番」を頼む人をいるだろう。ちょっとした買い物に行く場合や緊急の用事で外へ出かけなければならないときなど。
「犬とウサギは24時間エアコンつけっぱなしで間違いないと思います。猫は比較的暑さに強く、エアコンを嫌う子も多いのですが、それでも猛暑の時はエアコンをつけて外出した方が良いと思います。人間がいる場合は、人間が快適な温度設定でいいと思います」
また「犬とウサギの飼い主さんはすでに気を付けている方が多いのですが、猫の飼い主さんが熱中症のリスクを意識していない印象です。近年猫が増えてきまして、来院数も増えているので、あらためて(熱中症対策の)注意を呼びかけたいです」と答えた。