神奈川県川崎市内の登戸駅近くで児童ら19人が襲われた殺傷事件について、無関係な他人を道連れにする形の「拡大自殺」ではないかという声がネット上で出ている。確保された男は自らの首を刺し、その後死亡した。
どんな見方ができるのか、拡大自殺について詳しい専門家に話を聞いた。
「関係ない人を巻き込むな」の声
「何の罪もない、関係ない人を巻き込むな」「死にたいなら勝手に死んでくれ」。2019年5月28日朝に事件が発生すると、ニュースのコメント欄などでは、こんなため息が相次いだ。
各種報道などによると、児童らを襲った男は川崎市内の51歳とみられており、スクールバスを待っていた小学生らに包丁を複数持って次々に襲いかかった。この事件で被害者2人が亡くなり、確保された男も自分の首を刺して搬送先の病院で死亡が確認された。
神奈川県警が通り魔事件の可能性があるとみて、殺人の疑いで捜査している。男は、リュックの中に他にも包丁を複数持っていたという。
犯行動機など詳しいことは分かっていない。しかし、無差別に襲って自らも自殺したらしいことから、「拡大自殺」とされた過去の事件との類似性がネット上で指摘されており、「漠然とした社会への攻撃なのか...」「今後増えていきそうで怖い」と不安も広がっているようだ。
『拡大自殺』(角川選書)の著書がある精神科医の片田珠美さんは28日、今回の事件について、「典型的な拡大自殺になると思います」とJ-CASTニュースの取材に答えた。
「欲求不満ある人が増えており、社会的孤立を防ぐしかない」
「犯人の経歴、人柄は詳しく分かっていませんが、自らの人生がうまくいかず、社会や世間が悪いと他責的な傾向が強いように思えます。拡大自殺をする人は、人生に絶望しており、社会への復讐感情が強いことが特徴です。おとなしく死ぬのはイヤだと思い、誰でもいいので巻き添えにして、打ち上げ花火を上げて死ぬパターンです」
アメリカでは、学校で銃を乱射した後に自殺する典型的な拡大自殺があるが、日本でも、1930年代にあった「津山三十人殺し」のほか、最近では、2015年6月に東海道新幹線内で起きた焼身自殺事件がそれに当たると片田さんは言う。
「社会に対して欲求不満を持つ人が多くなってきていますので、今後は日本でも増えていくと思います。こうした人は、精神が不安定で、破滅的な喪失体験に見舞われやすいですね。たとえ、優しく接したとしても、自己愛の強い人は、自分はもっと報われていいはずだと思ってしまいます。対策としては、欲求不満をできるだけ少なくするために、社会での孤立を防いだりするしかないでしょう」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)