ついに監督もビッグネームを招聘するのか。サッカーJ1・ヴィッセル神戸が、名門アーセナル(イングランド)を長年率いたアーセン・ベンゲル氏(69)に監督就任オファーをかけていると一部海外メディアが報じ、大きな関心を集めている。
監督招聘が実現した場合の選手起用をめぐっても憶測が飛び交う。特に元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(35)らの処遇である。
「有望株」を積極登用
英紙「デイリーメール」は2019年5月25日、神戸が2021年末までの期間でベンゲル氏に監督のオファーを持ちかけたと報道。年俸は400万ユーロ(約4億9000万円)という。英紙「ザ・サン」やサッカーメディア「GOAL」(英語版)も報じた。さらに日本のスポーツ紙各紙は26日、神戸オーナーの三木谷浩史・楽天会長兼社長が「具体的な動きはない」と語ったことを伝えている。
ベンゲル氏といえば1997年から2018年まで22シーズンに渡ってアーセナルの指揮官をつとめた名将。03-04年はリーグ無敗優勝を成し遂げるなど、一時は常勝チームを作り上げた。95~96年には名古屋グランパスを率いており、日本文化にも理解がある。
それでも懸念されるのは、神戸というクラブとの相性だ。神戸には元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(33)、元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(35)、同FWダビド・ビジャ(37)というW杯優勝経験のあるスター選手をそろえ、イニシャルから「VIPトリオ」とも言われるが、年齢的にはベテランの域にある。イニエスタは負傷中、ポドルスキも体調不良から回復したばかりだ。
ベンゲル氏はアーセナル時代、「有望株」を見出すことに長けた監督としても知られた。有名どころでは元オランダ代表FWロビン・ファン・ペルシー(35)を21歳当時から根気よく起用し続け、世界を代表するFWに成長させた。元スペイン代表MFセスク・ファブレガス(32)については10代から重用され、その後名門を渡り歩いた。元ドイツ代表MFメスト・エジル(30)はレアル・マドリードで定位置を失っていた13年(当時24歳)にアーセナルへ移籍すると、ベンゲル氏のもと攻撃の要として輝きを取り戻した。こうした例は枚挙に暇がない。
「走り回れない奴は興味ない」?
ベンゲル氏はパス&ムーブと呼ばれる、パス出しと次の動きが一体化した戦い方を志向。単にボールを保持するだけではなく、ゴールに向かっていく速さも重視したため、選手には豊富な運動量が要求された。その中で、若く、走れる選手を積極的に登用してきた傾向がベンゲル氏にはあった。必ずしも「即戦力」に頼ることなく、チーム作りに一定の期間をかけた。
こうした点で、運動量には限界があるベテランの「VIPトリオ」が、そのメガネにかなうかどうかは不透明。ポドルスキについてはかつてアーセナルに3季所属したが、最終年はスタメンの座を失った。ネット掲示板などでは
「ベンゲルならビジャやイニエスタは使わんだろ? 激しい守備を90分要求されるから」
「ベンゲル来たらイニエスタとかビジャとか老人はイラネって言われるだけじゃね 走り回れない奴は興味ないだろ」
「監督に就任したら、イニエスタ切るんじゃね?」
「ベンゲルじゃ三木谷の思うようにビジャ、イニエスタ、サンペール、ポドルスキは使ってくれないと思うぞ」
などの声まで出ている。
「ベンゲルに求めてるのは求心力でしょ」
26日のJ1・湘南ベルマーレ戦で、神戸は公式戦9連敗からついに脱出。連敗中の9戦で7得点だった攻撃陣が4発を叩き込み、4-1と快勝を収めた。最たる活躍を見せたのは2ゴール1アシストのブラジル人FWウェリントン(31)で、ゴール前で体を張り続けた。ビジャもリーグ戦3試合ぶりの1ゴール。チームは13位と下位に沈んでいるが、いよいよチームとして噛み合い始めてきた感もある。
神戸はファン・マヌエル・リージョ監督をシーズン開始間もない4月に解任。現在のバルセロナの礎を築いたジョゼップ・グアルディオラ氏(現・マンチェスター・シティ監督)の「師匠」とされるリージョ氏が、「バルサ化」を進める神戸を去ったことは衝撃を与えた。同時に、今後のチーム作りを託すことができ、個性豊かな選手をまとめる力も持つ監督の招聘は急務。そうした中で浮上したベンゲル氏の名前。インターネット上では「ベンゲルに求めてるのは求心力でしょ」「チームのモチベーションを上げればここまで低迷するチーム構成じゃない」と、純粋な戦術以外にも期待したい部分があるようだ。