管理栄養士はどう見る?
栄養の専門家は今回の一件を、どう捉えるのか。管理栄養士の成田崇信氏はJ-CASTニュースの取材に、
「あまり厳格でないいわゆる『ゆるマクロビ』であれば、肉食過多で食物繊維の摂取が少ない現代的な食生活に採り入れるのは有用という意見はわからなくもありません。有用な部分は多くの人が不足しがちな食物繊維をとれることが期待できるということですね」
と前置きしながらも、次のように懸念が大きいことを示す。
「栄養面で問題になるのは、成長期の子どもや骨粗鬆症のリスクの高い女性が、乳製品の摂取を減らしてしまうおそれがあることです。日本人の平均的な乳製品摂取量は、学校で給食などがない人では推奨される量に達していない状態です。乳製品をとらないで十分なカルシウムを摂ろうとするのはプロでないとなかなか大変です」
その上で、今回中止された都の食育講座の問題点をこう述べる。
「乳製品をとることに悪いイメージを与える食育講座というのは公衆衛生上問題視されても仕方のないものでしょう。今回の講座で紹介するレシピが不明ですが、一般にマクロビオティックの食事は食塩過多になりやすいものが多いので、その面でも心配があります。一番の懸念は、食育講座で教えてもらったことでマクロビオティックに興味を持つだろう事です。ここを入り口に、マクロビオティックの食事を始める人がいるかもしれません」
また、成田氏はマクロビそのものについて
「日本人では食塩過多による高血圧が問題になっていますが、マクロビオティックでは自然な塩であれば、控える必要がないと主張されることもあり、栄養学に基づいた食事法ではありません。科学的根拠やエビデンスとは外れた食事法といえます」
との認識を示す。また、マクロビは動物性食品を禁じていることから、動物性食品でなければ必要な摂取量を満たせない栄養素として「ビタミンB12欠乏も心配されます」という。
J-CASTニュースは、(1)都がマクロビに関する食育講座を中止したことをどう考えるか(2)マクロビについて科学的根拠や栄養面で懐疑的な声があることについてどう考えるか――について、普及団体である日本CI協会に取材を申し込んだが、「コメントできる立場にないので控えたい」とのことだった。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)