ホンダの株価が本格的な下降局面に入った可能性がある。2019年5月8日の決算・業績予想発表を受けて急落し、反転の兆しが見えないためだ。
投資家が問題視しているのは四輪事業の収益悪化。改善に向けてそれなりに手は打っているのだが、経営効率化のスピードが遅いと見られてしまっており、株価を上昇させるきっかけをつかめないのが現状だ。
3期ぶりに二輪が四輪を逆転
2019年3月期連結決算(国際会計基準)と2020年3月期の業績予想の発表を受けた9日の株価は一時、前日終値比4.8%(143円)安の2846.5円と4カ月ぶりの安値をつけた。終値は4.7%(140円)安の2849.5円で、当日高値(2978.5円)が前日安値(2984円)を下回る「窓をあける」節目のチャートとなった。その後も9日の終値を下回り続け、直近ピークの2018年1月(4151円)から3割程度安い水準にとどまる。
それでは売り材料となった8日の発表内容を点検してみよう。まず2019年3月期だが、売上高が前期比3.4%増の15兆8886億円、営業利益が12.9%減の7263億円、純利益が42.4%減の6103億円だった。売上高は過去最高を更新したのだが、利益がまるで伸びなかった。
問題となっている四輪事業は、販売台数は532万3000台で前期の519万9000台から12万4000台増えた。日本では4月まで車名別新車販売台数(軽自動車含む)で20カ月連続首位の軽自動車「N-BOX」が好調、中国では新型車インスパイアの投入などにより、146万7000台と過去最高の販売台数を記録した。一方、米国ではセダン市場の縮小により販売台数は161万2000台と前期(163万9000台)を下回った。
台数はさほど悪くないのだが、四輪事業の営業利益は前期比43.9%減の2096億円と不振だった。米国の不調に加え、欧州での生産再編費用680億円を計上したことも響いた。その結果、四輪事業の営業利益は二輪事業(前期比9.2%増の2916億円)を下回った。四輪二輪の逆転はタカタ製エアバッグのリコール費用がかさんだ2016年3月期以来、3期ぶりだ。
最新技術レースに付いていくためにも...
2019年3月期の四輪事業の売上高は11兆円余りで、二輪事業は2兆円余り。売上高が5倍の四輪が利益額で二輪に負けているわけで、四輪事業の経営効率の悪さが際立つ。ちなみに四輪事業の売上高営業利益率は1.9%で、原価低減をお家芸とするトヨタ自動車の自動車事業(7.5%)に大きく水をあけられており、株式市場から疑問符を投げつけられているわけだ。
2020年3月期の業績予想はどうか。売上高は前期比1.2%減の15兆7000億円、営業利益は6.0%増の7700億円、純利益は7.9%増の7300億円を見込む。四輪の販売台数は米国の在庫調整などで3.1%減の516万台を計画する一方、派生車種の絞り込みなどで生産効率を上げることで利益を上積みする考えだ。販売計画は異例のマイナスだが、これで伊東孝紳前社長の「2016年度に四輪販売600万台」という拡大路線をようやく修正することになる。
ただ、スピード感に欠けるとも見られている。ホンダは英国やトルコ、狭山の工場閉鎖など世界の生産体制の見直しに着手しているが、八郷隆弘社長は8日の事業方針説明会で「グローバルでの生産領域の費用を2025年までに18年比10%削減する」との目標を発表した。7年間で1割とはトヨタ系部品メーカーなら鼻で笑うのではなかろうか。
世界の自動車メーカーは自動運転や電動化といった最新の技術開発に向き合っている。ホンダもその「レース」に参加しているわけだが、足元の四輪事業でしっかり稼げる体質にしておかねば研究開発も覚束なくなると見られかねず、その点を株式市場が注視していると言えそうだ。