新幹線に押し出されて、せっかく保存した展示車両が失われてしまう―そう危惧する声が鉄道ファンに広がっている。
JR東海は2019年7月17日から、リニア・鉄道館(名古屋市)でN700系新幹線電車の展示を始めると5月17日に発表したが、これにともなって在来線で活躍した117系電車と381系電車の一部の展示終了も発表された。
博物館で安住の地を得たと思った車両が失われる―こうした事態は、実は簡単に起こりえるのかもしれない。鉄道車両の保存をめぐる問題を探った。
「しなの」で08年まで活躍
JR東海発表によると、N700系量産先行車3両を展示するにあたり、屋外の展示予定場所にある117系電車3両のうち1両を屋内に移設し、同時に117系の移転先に展示中の381系パノラマ型グリーン車「クロ381形」の展示を6月7日限りで終了する。
クロ381形は、国鉄民営化後の1988年にJR東海が改造したパノラマ型の車両で、同社の特急「しなの」で08年まで使われた、この1両のみが現存する貴重な車両だった。また117系も1982年から2013年まで名古屋エリアの東海道線を中心に活躍していた。展示終了の知らせに、惜しむ声と、とりわけ1両しか残っていないクロ381形の行く末を案じる声が相次いだ。
JR東海は5月21日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「総合的な判断で、(117系とクロ381形の)展示を終了することとしました」
と理由を答えた。展示を終える3両は、館外に搬出の後解体する計画だという。鉄道ファンの不安は的中し、解体が既定方針とのことである。
一度は保存した鉄道車両が失われることは、やむを得ないことなのか。