ボクシングの「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」準決勝が2019年5月18日(日本時間19日)、英国グラスゴーのSSEハイドロで行われ、WBA世界バンタム級王者・井上尚弥(26)=大橋=が、IBF同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26)=プエルトリコ=を2回1分19秒TKOで破り決勝進出を決めた。
無敗同士の最強王者から3度のダウンを奪う圧勝劇でIBF王座を獲得し、WBA王座は2度目の防衛。これで18戦全勝(16KO)とした井上は、決勝でWBA同級スーパー王者のノニト・ドネア(36)=フィリピン=と対戦する。
大橋会長が語った見えないパンチが生まれる理由
早朝の日本を震撼させた井上の259秒の衝撃TKO。2018年10月7日に行われたWBSS初戦の70秒KOに続く「瞬殺」となった。初戦のフアンカルロス・パヤノ(35)=ドミニカ共和国=戦では、「見えない右」を打ち抜き、準決勝では「見えない左」で致命的なダウンを奪い、2回早々に試合を決定付けた。WBSS初戦は左ジャブからの右が相手の死角を突き一発で仕留めた。準決勝の最初のダウンは左フックがカウンター気味に入ったもので、おそらく相手にはこの左が見えていなかったのだろう。
ロドリゲスはこれまで19勝(12KO)で無敗を誇り、井上のプロキャリアで「最強」の呼び声が高い王者だった。事実上の世界バンタム級最強を決する一戦とされ、世界中から注目が集まっていた。その「最強」王者でさえかわし切れなかった井上のパンチ。なぜ世界王者ですら井上のパンチを見切ることが出来ないのか。井上がプロデビューしたばかりの頃、大橋秀行会長(54)を取材した時に聞いた話がある。
大橋会長が井上の強さについて指摘したのは「左ジャブの強さ」と「防御テクニック」だった。当時、井上はライトフライ級(48.9キロ)だったが、大橋会長は井上のパンチ力を「バンタム級以上」と評していた。その上で、井上の左ジャブの強さを普通のボクサーの右以上とも言っていた。
大橋会長の説明によると、対戦相手は井上の左ジャブを警戒するあまり、左のフェイントに誘われ一瞬、ガードが空くという。そこに左以上の右が来るわけである。この右を食らうと今度は右を恐れるあまり、過度にガードが上がりボディーががら空きとなる。左を意識すれば右がよけ切れず、右を意識すれば左を食らう。そしてガードを固めればボディーへ。まさに負のスパイラルに陥ることになる。