J1・湘南ベルマーレを襲った「世紀の大誤審」に、複数のプロ選手が自身も誤審の経験があるとする声をあげた。
日本代表DF昌子源はツイッターに「誤審で悔しい思いをした事もあります」と吐露。逆に「誤審で助かった事」もあるとするなど、誤審問題は現役選手の間でも議論を沸騰させている。
「ありえない誤審された経験もある」
問題のシーンがあったのは2019年5月17日の第12節・湘南-浦和レッズ戦。0-2で迎えた前半31分、湘南のMF梅﨑司の縦パスを受けたMF杉岡大暉が反転して左足を振り抜くと、ボールは右ポストに当たって左サイドネットを揺らした。反動で戻ってきたボールは、浦和GK西川周作がキックオフのためにセンターサークルへ戻すような素振りで転がした。ハイタッチする湘南の選手たち。
ところが山本雄大主審はプレー続行を指示。浦和の選手のカウンターとなった。湘南のゴールは認められなかったのである。湘南の選手や曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は「信じられない」という様子で審判団に詰め寄った。動画配信サービス「DAZN」で解説をつとめた元日本代表の中田浩二氏は「明らかに入っていましたね」「レフェリーはなぜ話し合わないのか」と不可解さをにじませた。湘南は後半に3点を返し3-2の逆転勝利を収めたものの、「世紀の大誤審」は大きな議論の火種となった。
現役選手も続々と声をあげており、自身の経験を重ねる向きもある。大分トリニータのMF馬場賢治はツイッターで「人間だからミスは絶対あると思う。それも理解してる」とした上で、
「ありえない誤審された経験もある。でもこれはちょっとありえない。みんな1試合に人生かけて戦ってる。大事な大事なチャンスにかけてる。誤審でしたじゃすまされないよこれは」
と、誤審を受けた過去と照らし合わせながら、湘南戦の事態の重大さを示した。
「副審も主審同様に自分のジャッジをしてもいいのではないか」
元鹿島アントラーズで現在フランス1部トゥールーズのDF昌子源もツイッターで「誤審もある中での試合展開に僕も驚きました」として、
「僕がJリーグでプレーしていた時によく思っていたのですが、副審の目の前でファールか何かが起きてもフラッグを振るわけでもなく、主審に任した!という感じがありました、副審も主審同様に自分のジャッジをしてもいいのではないかと感じています。僕自身、誤審で助かった事もあれば誤審で悔しい思いをした事もあります」
と自身も誤審の経験があることに触れている。
思い出されるのは鹿島時代の18年3月31日に行われた北海道コンサドーレ札幌戦。後半17分、札幌MF三好康児がゴール前で放ったシュートは、スライディングでブロックしようした昌子の左腕に弾かれた。だがハンドの判定は取られなかった。札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は試合後、主審から「あれは誤審だった」との言葉をかけられたという。昌子は「誤審」で「助かった」のである。
昌子は今回、ツイッターユーザーから「あれはPKだって自分でもわかってたのか」と質問されると「はい、『誤審で助かった』は札幌戦のハンドが1番強く残ってます」と返答。さらに
「ですがコンサドーレさんの選手もハンドをノーハンドと取られたことがあるはずです。それが一度もないならいくらでも言ってください!」
としており、誤審が多いことを物語っているといえる。
「美談にだけにして終わらせて欲しくない」
一方、昌子は湘南戦の問題のシーンについて、
「あの瞬間、両チームとスタジアムの反応で入ったと察知できなかったのかな。主審の位置と両チームの選手の位置がほぼ同じ所にいて、両チームが入った、入れられた反応をしてるのになぜレフリーが分からなかったのが不思議ですね。そのあと主審が副審の方を見てノーゴールになってますね」
と審判団の行動に疑問を示した。また、
「スタジアムの雰囲気、選手の反応で笛ふけって言ってる訳ではなく、確かにプレー続行になれば止めるタイミングがないですが、レフリーは無線もあるので4人で話がすぐ出来たのか、など考えての発言です」
と注釈を加えている。
今回の問題の当事者である湘南の梅崎も、試合後にツイッターを更新。逆転勝利したものの「誤審」を目の当たりにしたことで、
「これを美談にだけにして終わらせて欲しくない。誤審は誤審。明らかに入っていた。僕らは人生をかけて戦っている。今回は奇跡的に勝利できたけど、あのゴールを認められず、あのカウンターで3点目をくらっていたらどうなっていたんだろう。そこは今後のサッカー界の為にも改善してほしい」
と願った。