神社などへの参拝の証しとして提供される「御朱印」を巡って、各地でトラブルが相次いでいる。
職員に暴言を吐いたり、高額で転売したりといったケースがあり、各神社も、対応に苦慮している様子だ。
一部の人たちは、「スタンプラリー感覚で来ている」
令和元年の初日となった2019年5月1日は、全国各地の神社などで御朱印を求める参拝者らが列を作り、ネット上でも大きな話題になった。
東京都渋谷区内の明治神宮では、10時間待ちの大行列ができたほか、令和ゆかりの地とされる福岡県太宰府市内の坂本八幡宮も、小さな境内に人があふれた。転売目的のケースもあったとみられ、この日のうちに、頒布価格の数倍もの値でフリマアプリなどに次々に売りに出された。
そんな中で、東京都台東区内の浅草神社は10日、数量限定の特別御朱印を巡って職員らに暴言を吐くなどの行為が一部であったなどとして、17日からの三社祭では頒布を見送るとフェイスブックで発表して、ネット上で話題を呼んだ。
また、福岡県北九州市内の到津(いとうづ)八幡神社では、公式ツイッターで7日、御朱印は1人1枚としたところ、通常の御朱印はいらないとページを引きちぎって特別御朱印を求める人がいたと憤りを露わにし、波紋が広がっている。
ネット上では、こうした一部の人たちのマナーの悪さを指摘する声が相次いでおり、論議になっている。
2年前にネット転売をツイッターで告発して話題になった茨城県守谷市内の八坂神社の下村良弘宮司は13日、一部の人たちについて「スタンプラリー感覚で来ている」とJ-CASTニュースの取材に話した。
「単なるコレクターだとしたら、本末転倒ではないか」
「『守谷では、ここでクリアになるんですか? コンプリートでいいですよね』などと御朱印帳を見せながら言ってきた人がいました。御朱印がもてはやされるようになったのは、テレビで取り上げた影響があるのではないですか。神社は心の拠り所だと思っていますので、参拝を目的に来てほしいですね。ですから、御朱印については、自らが直接書くスタンスでやっています」
神社の活動をよく理解していない人もいるといい、5月12日は祈祷が入ったため御朱印の受け付けを14時30分から再開すると張り紙を出したところ、「えー信じらんない!こんなの初めて~!」と大声を上げる人がいた。令和初日の1日も、別の仕事があるため16時で締め切ったところ、「遠方から来ているのにー!」と不満の声が出たという。
ネット転売に苦慮している神社なども多いようだ。
仙台市内の坪沼八幡神社では、月ごと限定の御朱印が高額で転売されているのを11日に知り、対策として、御朱印の紙の裏に参拝者の名前を書いてもらって番号を振る試みを始めた。さらに、5枚ぐらい求める人もいたため、1人1~2枚に頒布を限定していると取材に明かした。
高山晃和宮司は、「参拝の証しとしてあるものなのに、何のために転売で御朱印を手に入れているのか理解に苦しみます。単なるコレクターだとしたら、本末転倒ではないかと思います」と話している。
一方、多くの参拝者は、神社に理解があるとの見方もあった。
明治神宮の広報担当者は13日、「令和の初日も、マナー面で大きな問題はなかったと思います。『8時間ぐらいかかりますよ』と伝えても、きちんと並んでおられました。皆さん、こちらがびっくりするぐらい、我慢して下さったと思います」と取材に答えた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)