東洋英和女学院の深井智朗・前院長による著書と論考にねつ造と盗用があったことを、同学院大学副学長らでつくる調査委員会が認めた研究不正問題をめぐって、ネット上では大きな話題となった。
実在しない神学者「カール・レーフラー」と、その人物が書いたとされる論文を著書に取り上げるなどして批判を受けるなか、ネットでは「深井氏の著書や論文を引用して、論文を作成した場合、論文の取り扱いはどうなるのか」という趣旨の声も上がっていた。
実在しない神学者
東洋英和女学院大の公表資料によると、昨2018年10月、キリスト新聞のウェブ版に「深井智朗氏への公開質問状と回答を学会誌に掲載」などと題された記事が掲載され、同氏の著書と論考にねつ造の疑いがあることが判明。設置された調査委員会が他大学からの協力を得て、調査をした。
約5カ月にわたる調査の結果、「カール・レーフラー」という神学者や、その人物が書いたとされる論文「今日の神学にとってのニーチェ」が実在しないこと、翻訳書から日本語の盗用をしていることを認めた。ねつ造と盗用が認められた著書『ヴァイマールの聖なる政治的精神-ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズム』は、岩波書店が12年5月に刊行。岩波は今回の問題を受けて5月13日、著書を絶版にし、回収することにしたと発表した。