郭台銘氏が「台湾のトランプ」になれば... 老獪な交渉力、東アジアのパワーバランスにも影響?

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   彼の両親は内戦で混乱に陥った中国大陸から台湾に渡ってきた。幼い頃、困窮した一家は寺の一室で生活していた時期もあったという。こうした経験が立身出世の思いを強くさせたとされる。

   1974年に創業したプラスチック部品の小さな会社が、後にIBMなどの欧米企業からパソコンの組み立て作業を請け負うようになった。会社は次第に成長し、ついに台湾一の富豪にまで登り詰めた彼は、ついに総統選への出馬を表明する。そう、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘会長である。

  • 2018年、米ウィスコンシン州への液晶工場建設にあたってのセレモニーで、トランプ大統領と並んで写る郭氏(右から2人目)
    2018年、米ウィスコンシン州への液晶工場建設にあたってのセレモニーで、トランプ大統領と並んで写る郭氏(右から2人目)
  • 2018年、米ウィスコンシン州への液晶工場建設にあたってのセレモニーで、トランプ大統領と並んで写る郭氏(右から2人目)

日本人を驚かせたシャープ買収交渉

   2020年1月の台湾総統選に向けて、野党の国民党から出馬する意向を表明した郭氏。68歳の郭氏は、電子機器受託生産で世界有数となった鴻海の創業者である。鴻海は日本のシャープも傘下に従え、買収に至る過程では郭氏が陣頭指揮をとった。その過程を振り返ってみよう。

   液晶への過大な投資で経営不振に陥っていたシャープに対して、鴻海が10%弱の出資をすることで両社は合意していたが、シャープの株価が低迷していたことを口実にして、鴻海は出資条件の見直しを始めていた。来日した郭氏との直接交渉で出資条件の最終合意を急ぎたいシャープに対して、郭氏は具体的な協業の内容を固めたかったため折り合いが付かず、郭氏は席を立ったという。

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