文字通り便利さを追求して日本人の生活に無くてはならない存在となったコンビニエンスストアが転機を迎えている。疲弊したフランチャイズ(FC)店の「反乱」が世論と政治を動かし、コンビニ本部が培ってきたビジネスモデルが立ちゆかなくなっているのだ。
人手不足で従業員を確保できなくなったセブン‐イレブンのFC店(大阪府東大阪市)がセブン本部の了承を得ずに24時間営業を断念し、夜中に閉店するようになったのは2019年2月。ネットメディア「弁護士ドットコム」の記事をきっかけに話題となり、大手マスコミも相次いでFC店オーナーが明かしたセブン本部とのやり取りを報道して、働き方改革に逆行する「高圧的な本部と虐げられるFC店」という構図が社会問題になった。これを受けて世耕弘成経済産業相は4月、各コンビニ本部のトップを集めて、人手不足対策やFC店の負担軽減に関する行動計画の提出を要請するに至った。
FC店への柔軟な姿勢を打ち出したが...
4月下旬にコンビニ大手3社が経産省に提出した行動計画は、いずれもFC店に対して柔軟な姿勢で対応していく方針を示したものだった。最大手のセブン‐イレブン・ジャパンでは、FC店の営業時間について永松文彦社長が「最後はFC店オーナーの判断に委ねたい」と述べ、従来の「原則24時間営業」からの転換を明言した。
セブンと2位のファミリーマートは、営業時間を短縮した場合の売り上げや物流に関する影響を調べる試みを一部の店舗で実施する。3位のローソンは無人店舗の実験も始める。公正取引委員会は、営業時間の短縮を求めるFC店に対して本部が一方的に拒否して不利益を与えた場合、独占禁止法に違反する可能性を示しており、契約を盾に取って24時間営業を店に強いてきたコンビニ本部のやり方は事実上通用しなくなった。各社の行動計画では、利用客自身が会計をするセルフレジの拡大や従業員が商品を並べやすい棚の導入なども盛り込み、人手不足に配慮する姿勢も強調した。
行動計画にFC側からは不満も
コンビニ店の大半は、コンビニ本部と店舗オーナーが結んだFC契約に基づいて営業している。本部がオーナーに商号の利用を認め、営業や販売のノウハウを提供する代償として、オーナーは本部にロイヤルティー(加盟店料)などを支払う仕組みだ。店で働く従業員の給料は店の売り上げの中からオーナーが負担しており、こうしたFC契約の利益配分まで踏み込んでいない今回の行動計画には、FC店オーナーの不満も伝えられている。
各社の行動計画を踏まえて、経産省は新たに立ち上げる有識者会議で、FC店の負担が実際に軽減されているか検証していく方針だ。ただ、コンビニ本部とFC店の対立は今に始まったものではなく、以前から各地で訴訟が起きている。日本人の働き方に関心が高まっているさなかに、分かりやすいFC店の「反乱」が起きて社会問題となり、参院選を前にした政治が手を突っ込んだ――という見方もできなくはない。
単にモノを売る店にとどまらず、一大インフラとなったコンビニ。店舗数の拡大はもはや限界となり、働き方も含めて在り方を見直すタイミングを迎えているのは確かだ。