米中摩擦も暗雲に... 投資家が「無印良品」に向ける眼差し

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   「無印良品」を展開する良品計画の株価が下落傾向から抜け出せずにいる。2019年4月10日に公表した2019年2月期連結決算の内容が良くないとして投資家から失望売りが出たうえ、中国への強気の出店を継続する2020年2月期も米中貿易摩擦が収まらない中で、不安視する声が出ているためだ。

   それでは2019年2月期連結決算の内容を確認しておこう。

  • 香港に出店した無印良品。中国では「おしゃれ」と支持を集める(Wpcpeyさん撮影、Wikimedia Commonsより)
    香港に出店した無印良品。中国では「おしゃれ」と支持を集める(Wpcpeyさん撮影、Wikimedia Commonsより)
  • 香港に出店した無印良品。中国では「おしゃれ」と支持を集める(Wpcpeyさん撮影、Wikimedia Commonsより)

スタッフ増員で人件費かさむ

   売上高にあたる営業収益は前期比7.9%増の4096億円、営業利益は1.2%減の447億円、純利益は12.4%増の338億円だった。純利益は4期連続で過去最高を更新したが、2019年2月期に限れば有価証券の売却で86億円の特別利益を計上したことによる一時的な要因が大きかった。営業利益は1月9日、国内事業における生活雑貨の不振、冬物商材の売り上げの伸び悩みなどを理由に従来予想より30億円低い470億円に下方修正していたが、さらにそれを20億円以上下回る着地となった。営業利益の計画未達について会社側は、「主力の国内事業でサービス向上のため戦略的に店舗スタッフを増員したことで、(ただでさえ高騰する)人件費を押し上げたことが要因だ」と説明している。

   こうした内容を受け、市場は従来のような成長力を維持できるか疑問視。SMBC日興証券は「未達幅が大きくネガティブ」とコメントした。野村証券は「2020年2月期は2年連続の踊り場を想定」とするリポートを出し、目標株価を4万1000円から3万5000円に引き下げた。2020年2月期の既存店増収率についても会社計画(国内4.1%増。東アジア4.9%増)に対し、いずれも3%増と慎重に想定した。

   決算発表を受けた11日の東京株式市場では、一時前日終値比16.3%(4270円)安の2万1900円と2017年2月以来、2年2カ月ぶりの安値をつけた。当日高値(2万3600円)が前日安値(2万5830円)を下回り、チャート上に「窓を開ける」節目の展開にもなった。終値は9.8%(2570円)安の2万3600円だった。

東アジア事業は成長軌道に乗るものの...

   野村以外でもゴールドマン・サックス証券、ドイツ証券、みずほ証券が相次いで目標株価を引き下げ、みずほ証券は投資判断についても「買い」から「中立」に格下げした。そうした影響もあって上値が重く、10連休直前の終値は2万1140円にとどまり、10連休明けの5月7日の終値は前営業日比1.9%(410円)安の2万730円となった。この日は米中貿易摩擦の激化が市場で懸念されて市場全体としても株安で日経平均株価は1.5%安だったが、良品計画が中国への出店を強化している「中国銘柄」でもあることから日経平均より下げがきつく、8日も続落。さらに米国が対中制裁関税を25%に引き上げたとのニュースが飛び込んできた10日には、1.9%(390円)安とさらに落ち込んだ。この日の終値は2万210円。2万円の大台割れも視野に入ってきた。

   良品計画の歴史は試行錯誤を重ねながら果敢に海外出店を進めた歴史でもあり、2019年2月期で海外売上高比率が4割と日本の小売業としてはかなり高い水準にある。米国のようになお苦戦が続いている地域もあるが、売上高が国内の半分(全体の3割)を占める中国などの「東アジア事業」のように成長軌道に乗っている地域もある。特に中国では「一歩先を行くおしゃれな店」として支持されているようだ。

   中国では2019年2月末で256点舗を数えるまでになっており、2020年2月期も30店舗規模と前期並みの高水準の出店を維持する方針。環境問題への関心も高まっており、無印良品の「エコな感じ」が売上高の増加に寄与するとみているようだ。ただ、中国経済の減速は続いており、米中貿易摩擦も激化しているだけに、「東アジア事業」の成長力に陰りが見える可能性も否定できず、その点も株価の重しとなっている。

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