映画料金の値上げが、相次いで発表されている。映画会社系列のシネコン(シネマコンプレックス)大手3社が、横並びで一般入場料を最大1900円にする。
東宝系のTOHOシネマズと、松竹系の松竹マルチプレックスシアターズ、東映系のティ・ジョイは2019年6月1日に、あわせて価格を改定。動画配信サービスが普及した昨今、この値上げがどんな影響を及ぼすのだろうか。
「もう気楽に観に行ける娯楽じゃない」?
TOHOシネマズは全国66施設で、一般料金を1800円から1900円へ値上げし、シニアやレディースデイなどの割引料金も100円引き上げる。松竹マルチプレックスシアターズも、MOVIXなど直営25劇場で価格を改定。一般料金が1900円になるのは、新宿ピカデリーと丸の内ピカデリーの都内2館のみだが、それ以外でも割引料金は100円ずつ値上げする。ティ・ジョイは直営12館と、他社と共同運営の6館で、割引料金が100円上がるほか、新宿バルト9では一般料金が1900円になる。
3社とも料金改定の理由として、アルバイト人件費を中心とした運営コストと、設備投資への負担増を挙げている。コストカットなど、企業努力を行った末の決断として、利用者に理解を求めているが、ツイッターでは、
「やっぱパソコンで見たほうがええ」
「もう気楽に観に行ける娯楽じゃない」
「映画も余裕ある人だけの楽しみになっていくのだろうか」
といった声が多い。加えて、安価で楽しめるレンタルDVD・BDやネット配信を待つ人々が増え、今まで以上に「映画館離れ」が進むのでは、といった見方もある。
一般入場料金は、時代に応じて変化してきたが、現在の価格に落ち着いたのは、バブル崩壊後の1993年ごろ。いまでは郊外に大型のシネコンがあるのは珍しくないが、そのはしりと言えるワーナー・マイカル・シネマズ海老名(現:イオンシネマ海老名、神奈川県海老名市)が誕生したのも、同じく93年だった。
視聴スタイルは大きく変化
それから四半世紀にわたって、「映画は1800円」で定着してきたが、その間に景気は徐々に回復。東京都の最低賃金は、この25年で620円から985円(2018年10月)にまで高まったことを考えると、運営会社が「人件費」を値上げの理由としたのも、わからなくはない。
一方で、人々のコンテンツとの接し方が変わったのも事実だ。ブロードバンド回線の普及によって、レンタルビデオ店に行かなくても、自宅のテレビやパソコンからVOD(ビデオ・オン・デマンド)で楽しめるようになった。モバイル通信も高速化して、スマートフォンやタブレットでも、ストレスなく映画に触れられる。
ソフト面でも、NetflixやHulu、Amazonプライムビデオなどのサブスクリプション(月額課金で使い放題になるサービス)が登場したことで、視聴体験を「買う」感覚は薄れつつある。いち早く大画面で楽しむか、ちょっと待ってでも家での気軽さを取るか。大手3社の値上げによって、より視聴スタイルが二分されていきそうななか、映画館はもっと付加価値をアピールしていく必要がありそうだ。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)