広島の会沢翼捕手(31)が2019年5月7日、国内FA(フリーエージェント)権の資格を取得した。出場選手登録機関が8年に到達したもので、今オフにFA権を行使する権利を得た。会沢はFA権の行使についてシーズン中ということで明言を避けたが、球団は全力で慰留に努める構えを見せた。広島はFAの「負の歴史」を断ち切ることが出来るのか。今後の動向に注目が集まる。
今シーズン中に国内FA権取得の可能性があった広島の4選手のうち、会沢が一番手で権利を獲得した。権利獲得の可能性がある残りの3選手は、野村祐輔投手(29)、今村猛投手(28)、菊池涼介内野手(29)となる。このまま順調にいけば3選手それぞれFA権取得になりそうだが、菊池に関しては、昨オフにポスティングシステムを利用してのMLB挑戦を表明しており、早ければ2020年シーズンにもアクションを起こす構えだ。
過去にはエースや主砲がFAで流出
1993年オフに導入されたFA制度は、広島にとっては「負の歴史」でもある。広島から初のFA移籍となったのが94年の川口和久投手だ。権利を行使して巨人に移籍し、5年後には主砲・江藤智内野手が同じく巨人に移籍。2002年には金本知憲外野手が阪神へ。07年には新井貴浩内野手が阪神に移籍し、エース黒田博樹が海を渡りドジャースに入団した。その後も広島からのFA流出は続き、昨オフには丸佳浩外野手(30)が大型契約で巨人に移籍した。
丸にいたっては球団が慰留のためにFA宣言後の残留を認めるなど、異例の待遇で慰留に努めた。だが、巨人が提示したとされる5年総額25億円(金額は推定)以上の破格の条件に屈する形で主砲を失った。開幕からの広島の成績を見る限り、丸が抜けた穴は予想以上に大きく、チームの低迷のひとつの要因とされる。会沢がFA権を行使すれば、広島の捕手では初めてとなり、移籍となれば広島にとって戦力ダウンは否めない。
正捕手の流出をなんとしても阻止したい球団は今後、会沢と残留の条件面について話し合いの場を持つと見られるが、在京球団の関係者は現在の日本プロ野球界の情勢を次のように語った。
「キャッチャー不足ですので、今は売り手市場」
「会沢ほどの経験があるキャッチャーなら獲得に手を挙げる球団は複数あるでしょう。巨人が3人のキャッチャーでまわしているように、これからのキャッチャーはピッチャーに合わせた複数人の担当制になるところも出てくる。ただでさえ各球団はキャッチャー不足ですので、今は売り手市場。会沢クラスになればかなりの条件を提示する球団もあるはず。広島はこれまでのこともありますし、後手を踏まないことですね」
会沢の持ち味はなんといっても屈強な体だろう。シーズンを通して正捕手としてマスクをかぶる体力を持ち合わせ、ケガにも強い。また、他球団からしてみれば、広島の「頭脳」を獲得することも大きなメリットになるだろう。これまで広島からFAで国内の他球団に移籍したのは7人で、その内訳は巨人4人、阪神2人、西武1人と、圧倒的にセ・リーグの球団が多い。広島の戦力を削ぐという目的においても、セ・リーグ球団が興味を示すことは必至だろう。
リーグ4連覇を狙う広島は今季、球団史上初となる開幕からの5カード連続負け越しを記録し、その後も上昇気流に乗り切れないでいる。チームには今後の巻き返しに期待がかかるが、会沢に続いて今シーズン中に野村、今村、菊池が国内FA権を取得することが見込まれるだけに、広島の頭痛の種は尽きることがない。