当日になって報道機関に通告があった2019年4月15日の記者会見。NTTドコモの吉沢和弘社長は「料金の組み合わせが多岐にわたっており、理解していただくことが難しかった。新プランはシンプルでお得になる」と胸を張った。
NTTドコモが発表した、6月に始める携帯電話の新たな料金プラン。日本の携帯電話料金の高さを指摘して「今よりも4割程度下げる余地がある」と注文をつけた菅義偉官房長官の発言を受けた各社の対応が注目されるなか、最大手のドコモが「最大4割値下げ」を打ち出した。どこまで「安くなった」かには議論があるが、その実像はどういったものか。
条件によっては、ライバルとあまり変わらない?
複雑化して分かりにくいと批判を浴びてきた料金プランを2つに集約して、家族契約している回線数に応じて値引き額を広げるのが、今回の肝の部分だ。
具体的には、音声通話プランとデータ通信プランを一体化して、データ通信量が多い人向けの「ギガホ」(税別で月額6980円)、メールやSNSの利用が中心でデータ通信量が少ない人向けの「ギガライト」(データ量に応じて、税別で月額2980~5980円)のいずれかから利用者はプランを選ぶ。さらに、ドコモで家族契約している回線数が2回線なら月額500円、3回線以上なら月額1000円を、家族の「ギガホ」「ギガライト」の料金からそれぞれ値引きする仕組みだ。
この結果、「ギガライト」の中でデータ量が最も少ない月額2980円(1GB以下)のプランで、かつ家族契約の回線数が3回線以上の場合は月額1980円となり、このケースに限って「従来の料金プランより最大4割おトクにご利用いただけます」というのだ。
もっとも、値下げ幅で考えると従来プランと比べ月額1300円程度に過ぎない。値下げ率は、「ギガホ」が3割、「ギガライト」でも1ギガバイトを超える場合は2~3割にとどまり、「最大4割値下げ」という売り文句は、まるで特売品の値引き率をアピールしているようなものとさえいえる。値下げ幅の小さい条件に限って4割値下げにすることで、ドコモ全体の収益への影響をできるだけ小さくしながら、菅長官の意向を汲んだ格好だ。ただ、条件によっては、新料金プランでもライバルのKDDI(au)やソフトバンクの現行料金とあまり変わらない事例さえある。
「儲けすぎ」批判をはねのけられるか
現在の月々の支払いは、通話・通信料金と、分割したスマートフォン端末代金を組み合わせた料金プランになっているが、新プランでは「通話・通信料金」と「端末代金」を分離した形になる。総務省は今秋にも、この分離を携帯電話各社に義務付けることにしており、ドコモはこの動きを先取りしたことになる。分離に伴い、現在はスマホ代金に対して実施している値引きを、通話・通信料金に対する値引きに切り替える形になり、新品のスマホを購入する場合の代金が現状より高くなる懸念もある。
ドコモは今回の料金プラン変更による減収が最大4000億円規模になると説明しているが、売上高が5兆円近く、営業利益も1兆円近いドコモは、これまでも「儲けすぎ」との批判が絶えず、格安SIM事業者への契約流出も止まらない。政治に動かされた形になった今回の料金プラン変更に対する評価が定まるのは、これからの話だ。