45歳の記者は、無類のスポーツ好きだ。しかし、昔から気になって仕方がないことがある。日本語でいうと「審判」なのだが、野球では「アンパイア」、サッカーやラグビーでは「レフェリー」と呼ぶ。でも、この「呼び名」の違いって何なの? J-CASTニュースでは、関係各所に聞いてみた。
1845年にはすでに野球界で「アンパイア」
まず、「野球殿堂博物館」(=東京都文京区)に聞いた。同所には「ニッカボッカ・ベースボールクラブ・ルール」という初期野球の「辞書」とも言える書籍があるという。
同書は、1845年にアメリカで製作されたそうだ。同年といえば、日本は、まだ江戸時代。老中の水野忠邦が隠居したり、世界では、ドイツ物理学者のヴィルヘルム・コンラート・レントゲンがX線を発見、後世の医学にも多大なる影響を与えた時期である。
同博物館担当者によると、
「当時(1845年)には『アンパイア』という言葉が記載されています。野球は元々、『クリケット』から派生したスポーツだといわれていますよね。現在では、夏休みの子どもたちに向けた『審判学校』というものも開催しており、実際の審判の方たちが『アンパイアって、こういうことだよ』といった企画もやっております」
つまり、少なくとも、170年以上昔から、野球では「アンパイア」だったことになる。
「アンパイア」より「レフェリー」が偉い?
一方、「レフェリー」派のサッカーはどうか。日本サッカー協会(以下、JFA=東京都文京区)によると、
「サッカーのレフェリーは『refer=委ねる』が語源です」
つまり、両チームの勝敗を「委ねる」という立場から「レフェリー」という名の「審判」が誕生した、ということらしい。実際、JFAが発行した「JFA news 3月情報号」の中では、JFA審判委員会の小川佳実委員長が、
「『The FA』(=イングランドサッカー協会)が1863年に創設された頃は、審判員の存在はなく、選手は規則を守り、スポーツマンシップに反しないこと前提にプレーしていました」
なるほど~。当時は、お互いの「セルフジャッジ」で、試合が進行していたようだ。ところが、
「競技性が高まるにつれて、公正、公平を自分たちで担保できなくなってきたようです。そこで、試合中に問題が起きた時に判断するものとして『アンパイア』を両チームから1人ずつ任命し、判断を任せるようになった。しかし、2人の『アンパイア』も意見が分かれたり、対立が起こるようになったことから、最終決定を委ねる(=refer)ために、相談役(仲介者)を配置した、それが語源にもなっている『レフェリー』です」
さらに、
「1891年、競技規則大改革でレフェリー(主審)がピッチに入り、アンパイアが線審としてタッチラインの外に出るという、現在の形になりました」
という。
とすれば、少なくともサッカーでは、元々いたのが「アンパイア」で、さらに最終判断をする役割として登場したのが、「レフェリー」ということになる。
「動く」のがレフェリー、「固定」がアンパイア?
一方でネット上では、
「動きながらジャッジするのが『レフェリー』、固定された位置で判断をするのが『アンパイア』」
といった記事も散見される。
しかし、長きにわたってバレーボールをしてきた人間に聞いても、ネット際で高椅子に座っている審判に関して、
「『アンパイア』とは呼ばない。あくまで『レフェリー』だ」
という意見もある。
念のため、広辞苑も引いてみたが、「アンパイア」の説明は「野球などの協議の審判員。→ジャッジ・レフェリー」...。
またちなみに、中国出身の記者によると、
「中国ではどちらも『裁判』あるいは『裁判員』を使っています。『アンパイア』と『レフェリー』に対応し、それぞれ異なる呼び方をしていないです」
ということだ。
取材しながら、なかなか「ジャッジメント」ができない話題だったが、「アンパイア」も「レフェリー」も、スポーツにおいては公正な「ジャッジ」を求めたいものだ。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)