過去の通知に縛られて? 「選挙公報」が、ネットから消されている

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   ネット上に掲載される選挙公報について、投票終了後も削除せず残してほしいと、ライター2人が署名サイトchange.org(チェンジ・ドット・オーグ)でキャンペーンを呼び掛けている。

   呼びかけ人は、「任期中、選挙の時に約束していたことと同じ行動を取っているか後から検証ができるようにするのは、全ての有権者に大切なこと」と訴える。

  • 2人が呼び掛けているキャンペーンページ(一部画像加工)
    2人が呼び掛けているキャンペーンページ(一部画像加工)
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「候補者にもメリット」「約束守れるというのを有権者に示すことにもなる」

   2019年4月18日夜に始めてから、25日17時過ぎで1万2000人以上が賛同。参院選が始まる前の6月末まで続ける予定で、集まった署名は総務省側に提出するという。

   キャンペーンは、選挙ライターの宮原ジェフリーさんとノンフィクションライターの畠山理仁(みちよし)さんが企画。change.orgでのページで2人は総務省と選挙管理委員会に対し、

一、選挙期間中にアップロードした選挙公報は、少なくとも政治家の任期中は各選挙管理委員会のサーバーから削除しないでください。
一、選挙公報を発行していてもインターネット上で公開していない自治体は、有権者の利便性向上のために公開に向けた取り組みを進めてください。
一、無投票となった選挙でも、立候補時の意気込みや提言に責任をもった仕事をしてもらうため、選挙公報を公開してください。
一、選挙公報を発行していない自治体は条例を制定して、次の選挙から選挙公報を発行するようにしてください。

と求めている。

   J-CASTニュース編集部ではキャンペーンを呼び掛けた、選挙ライターの宮原ジェフリーさんとノンフィクションライターの畠山理仁(みちよし)さんにそれぞれ話を聞いた。

   2人は、全国の選挙公報をダウンロードして集める企画に参加。選挙期間が終わり、選挙広報が公開されなくなる状態への問題意識を共有する場面が多く、キャンペーンを始めることに。宮原さんが畠山さんに声を掛け、実現したという。

2015年の通知で「更新」されたはずなのに

   署名サイトでの呼び掛け文などによると、選挙公報がネット上にアップされるようになったのは、東日本大震災がきっかけ。震災で住民が避難を余儀なくされ、選挙公報を届けることが物理的に難しくなり、ウェブに上がる動きが加速していったという。

   ところが今回、前半の統一地方選が行われた41都道府県の選挙管理委員会のうち、投票終了後すぐに選挙公報がサーバーから削除され、4月16日時点でその数は23府県に増えた(畠山さん調べ)。

   これには理由がある。総務省は2012年3月29日付で「掲載期間は投票日当日までとすることが適当」などとする通知を全国の選管に出したからだ。

   一方で、選挙公報のネット上への継続掲載をめぐっては、15年5月14日に初鹿明博衆院議員が国会で質問主意書を提出。総務省が掲載を投票日当日までとする理由として、「選挙運動用ポスターに準じた取り扱いとすることが望ましい」としていることについて、初鹿氏は「選挙公報は各候補者の公約が記されており、後日、それが履行されているかどうかを確認するための数少ない材料となるものであるので、顔写真しかないポスターと同列に扱うべきものではない」と主張した。

   質問に対し同月22日、安倍晋三首相は大島理森議長宛に答弁書を送付。投票日の翌日以降も選挙公報を選挙管理委員会のホームページに掲載することについては、

「次回以降の選挙に係る選挙公報と混同されたり、選挙の公正を害するおそれのない形式で行われるものである限り、差し支えないものと考える」

と示している。つまり、2012年の通知はすでに過去のものなのだが、にもかかわらず畠山さんは自治体のウェブサイトから選挙公報が削除されている実態について、「(公報を)置いておいても問題はないが削除されてしまう。古い総務省の通知に従って、削除しているんだと思う」とみている。

有権者側、候補者側にメリット

   J-CASTニュース編集部は、総務省にも電話取材をした。4月24日に同省選挙課の担当者が回答したところによると、15年5月22日に国会で答弁書が出ていることについて、全国の各都道府県の選管に通知。答弁書を別紙として付けているという。

   畠山さん側が調べた情報(選挙公報が削除された府県)の中には、人口の多い自治体の名前も。人口が880万以上(有権者数は730万人以上。いずれも3月1日時点の数字)の大阪府に取材した。

   同選挙管理委員会事務局の担当者によると、4月7日に行われた府知事選、府議選挙とも、総務省の「投票終了時刻20時にただちに削除するとしても差し支えない」という趣旨の通知に基づき、20時にただちに削除。削除するかどうかは選管が判断しているといい、12年に総務省から出された通知に基づいているという。15年5月22日付で総務省から出ている通知について認識しているかどうか尋ねると「平成24(2012)年3月に出ている分で判断していることしか言えない」と回答。理由や経緯を聞いてみても、「(通知に)基づいてやっているとしか言えない」と明確な答えは得られなかった。

   宮原さんは取材に対し、「(議員は)現状の選挙制度で当選する方なのでなるべく現状の選挙制度を変えたくない思いは働きがち。ただ、今回私たちが呼び掛けていることに関しては否定しがたいこと」と強調。キャンペーンの趣旨については、次のように訴えた。

「(選挙公報が)なくなってしまうことに気付いていなかった人が圧倒的で、多くの有権者が検証しようという発想すらなかった。有権者側の責任として考えるきっかけにしたい」(宮原さん)

   「候補者にもメリットになる」と話すのは畠山さん。「キャンペーンに賛同してくれるということは4年間約束を守れるというのを有権者に示すことにもなる。いい加減なことをやっている候補者に緊張感が出て、社会のためにもよい影響があるのでは」と利点を強調した。

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)

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