昭和63年(1988年)生まれの筆者は、幼いころ、「都営12号線、平成12年延伸予定!」と書かれたポスターを見て、ずいぶん先の話だなぁと思った記憶がある。その都営12号線――つまり大江戸線の延伸からも気づけば20年が経ち、私は三十路に。元号も新たな「令和」を迎える。
では、令和元年(2019年)以降には、どんな交通網が生まれるのだろうか。首都圏に絞って、注目路線をまとめてみた。
オリンピック前に整備される路線も
まずは2019年11月、横浜市内に開業予定の「相鉄・JR直通線」。相鉄本線の西谷駅(保土ケ谷区)から、新設されるJRと相鉄の「羽沢横浜国大駅」(神奈川区)までの路線で、ここから新宿方面のJR線に直通運転する。
また、羽沢横浜国大駅から北には、新横浜駅(港北区)を経由して、東急東横線・目黒線の日吉駅(港北区)に至る「相鉄・東急直通線」が建設中。22年度下期の開業予定で、こちらも東急線への直通運転が計画されている。
東京都内に目を向けると、都心と臨海副都心を結ぶ「東京BRT」のプレ開業が、20年の東京五輪前に予定されている。これは鉄道ではなく、バス高速輸送システム(BRT)で、22年以降に本格運行される予定だ。東京都都市整備局と、運行事業者の京成バスが18年8月に公表した事業計画によると、プレ運行時のルートは虎ノ門~新橋~勝どき~晴海二丁目。五輪終了後には、豊洲市場や東京ビッグサイト方向まで、南へ延伸する予定だ。
銀座と臨海副都心を結ぶ地下鉄構想
実際に着工はしていないが、今後整備が進められそうな交通網を知る上で、参考になる資料がある。国土交通省の交通政策審議会が16年7月に出した答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」には、30年ごろを念頭に置いた24のプロジェクトが挙げられている。その中には、自治体や鉄道会社が、設置に積極的なものもある。
東京都の小池百合子知事が19年4月5日の会見で触れたのは、「都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備」の一部。この構想は、つくばエクスプレス(常磐新線、現在は秋葉原止まり)を東京駅まで延伸し、その先に銀座経由で臨海副都心へ向かう地下鉄を整備するものだ。このうち、東京~銀座~臨海部の地下鉄については、会見前日に読売新聞が「今後10~20年後をめどに整備する方針を決めた」と報じていた。報道陣から問われた小池知事は、整備方針は固まっていないと否定する一方、その重要性は認識していると話した。
同じ都知事会見では、「東京8号線」の延伸についても話が出た。8号線とは、東京メトロ有楽町線を指し、答申では豊洲から分岐して、住吉まで北上するルートが示されている。東京都は、答申に含まれる構想のうち、6路線を優先して検討しているが、その中でも注力しているとされるのが、この8号線だ。
沿線となる江東区の特設ページによると、19年3月28日の区議会委員会で、東京都が区に対して、同路線は「東京メトロによる整備、運行が合理的」との考えを伝える中で、6路線の中で「一番力を入れて取り組んで」いると発言。知事会見では、「東西線の混雑緩和」と「臨海地域発展に寄与」などを理由に重要な路線としつつ、優先的な整備には「幾つか整理をすべきことがございます」と答えるにとどめた。
「羽田空港アクセス線」は令和10年に開業?
臨海部に加えて、注目されているのが、空港アクセスだ。答申では、都営浅草線を迂回して、羽田と成田をつなぐ、押上~新東京~泉岳寺の「都心直結線」、羽田と東京貨物ターミナル(品川区)付近を結び、そこから東海道線(田町)、りんかい線(大井町、東京テレポート)へ分岐する「羽田空港アクセス線」、東急多摩川線の矢口渡から、蒲田、京急蒲田を経て、京急空港線の大鳥居(いずれも大田区)へ向かう「新空港線」(通称:蒲蒲線)が採択されて、「アクセス線」「新空港線」に関しては、都の優先する6路線に含まれている。
このうち「羽田空港アクセス線」は、JR東日本が19年2月、建設に向けた環境影響評価(アセスメント)に着手すると発表。アセスメントに3年、建設に7年かかるとみられ、その通りに進めば2029年、令和で言えば10年ごろの開業となる。
「新空港線」については、蒲田~京急蒲田の約800メートルと短距離ながら、大きな効果が得られると、地元の大田区が導入に積極的だ。一方で、東急と京急で線路の幅が違うことなどもあり、東急各線やそこに乗り入れている東京メトロ副都心線などと、京急空港線を相互直通運転させるには課題が多い。そのため、区の構想では、途中駅で乗り換える案になっている。
平成の31年間でも、首都圏の交通網は大きく変化した。地下鉄でいえば、南北線、副都心線、都営大江戸線(当初は12号線)が開業。空港アクセスでも、駅の移設やスピードアップが繰り返され、よりスムーズに空の旅を楽しめるようになった。さて、令和の世には、どんな変化が起こるのだろう。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)