日の丸を意識した?大統領夫妻
複数の映像を何度か確認したが、トランプ氏が「Stop.」と言っているようには見えない。「More closer.」という、おそらく英語のネイティブではない男性カメラマンらしき声は聞こえる。が、安倍氏が近寄った時にトランプ氏がささやく声は、聞き取れない。おそらく、その場にいたカメラマンにも、聞き取れなかったのではないだろうか。ただ、口の動きから「Stop.」ではなく、「Ya.(うん)」「Yup.(そう)」などと軽くつぶやいたように見える。その場の和やかな雰囲気からも、そう捉えるのが自然だ。
韓国メディアは、文大統領の時には、レッドカーペットにトランプ氏と並んで撮影されたとし、安倍首相との"待遇の違い"を強調している。
しかし実際には、トランプ氏と並ぶ文氏が、レッドカーペットからはみ出している写真もある。トランプ氏と並んだ他国の首脳が、同じようにはみ出している写真もあれば、トランプ氏自身がはみ出しているものもあり、今回、安倍氏が冷遇を受けたとはいえないだろう。
トランプ氏は赤いネクタイと白いYシャツ、メラニア夫人は白いドレスに赤い靴。日の丸カラーを思わせる出で立ちで、気配りを感じさせる。
トランプ氏は初めからレッドカーペットの真ん中に立って安倍首相夫妻を出迎え、車を降りたふたりがその脇に控えめに立つ形となった。
一部韓国メディアの見方とはやや違うが、米国内でも「首相夫妻に対して失礼だ」との声はある。
来賓を迎えながら自分だけレッドカーペットの真ん中に立ち、一番先にホワイトハウスに入っていく姿に、「相変わらず自分中心で、雑で心配りがない」と眉をしかめる人もいれば、「レッドカーペットの立ち位置なんて、トランプにとってはどうでもいいことさ」とさらりと流す人もいる。
よくも悪くも、「これぞトランプ」なのである。
(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。