「平成最後の日」となる2019年4月30日、新聞各紙はこぞって「平成」という時代の歩み、そして天皇・皇后両陛下の足跡を振り返る特集を組んだ。
一見すると似たり寄ったりにも見える紙面だが、首都圏で販売されている全国紙、主要紙の30日付朝刊の1面を比較してみると、各紙のカラーの違いもにじむ。
朝日のみ「桜の写真」、服装にも差
注目されるのは、使われている写真だ。
毎日、読売、日経、東京の4紙は、「陛下きょう退位」(読売)といった大見出しとともに、いずれも天皇・皇后両陛下の写真をトップに掲載した。産経はサイズこそ小さいものの、やはり両陛下の写真を使い、皇太子さま夫妻の写真と並べる形で載せている。
異彩を放つのが、朝日だ。唯一トップを「元号案 首相指示で追加」と退位がらみ以外の記事とし、「退位」記事は2番手扱いのいわゆる「肩」(左上)に。またこちらの記事でも、陛下の写真は使っていない。
その代わりに大きく載ったのが、秋田県仙北市の「桜」の写真だ。この桜は、1934年に陛下の誕生を祝って植えられたものだという。「同じ年月重ねた」の小見出しと合わせ、退位される陛下へのメッセージとも取れるレイアウトとなっている。
朝日以外の各紙でも、写真のセレクトに差が見られた。たとえば読売は、伊勢神宮参拝の際、集まった人々に手を振る両陛下の写真を選んだ。天皇家の祖先神とされる天照大神に退位を報告された際のものという、「皇室の伝統」との関係性を想起させる姿だ。
対して毎日、東京は、横浜市の「こどもの国」で、幼稚園児らと笑顔で触れ合われる両陛下の姿をトップに掲載。服装もカジュアルなもので、国民から広く親しまれた、陛下の歩みを思わせるものだ。このほか日経は、「最後の皇居外公務」となった「みどりの式典」出席時の写真を用いている。
あわせて掲載された1面記事は...
「退位」記事以外の1面記事の選び方にも、各紙のスタンスが浮き彫りに。
朝日は前述の通り、トップを新元号「令和」決定をめぐる、安倍晋三首相の「指示」などを明かすスクープ記事に。対する読売は「肩」で、経済産業省の「エネルギー白書」の原案を報じた。
毎日は東日本大震災で被害を受けた、岩手県久慈市の駅売店の姿を紹介。欧米歴訪を終えた安倍首相の動向を、写真付きで掲載したのが産経。日経は、国内スタートアップ企業への投資拡大を解説。
異色は東京で、「戦争で心に傷負い入院 最後の旧日本軍人逝く」の見出しで、戦傷病者特別援護法に基づく支援を受けていた旧軍人が2018年6月に亡くなり、同法の対象となる精神疾患による入院患者がゼロになったことを報じている。