「予言」はこうして独り歩きした
なお、大元の五島氏の著書では、「クハンダ予言」は数ある太子の予言の一つとして扱われるのみで、それほど重要視されていない。五島氏は、以下のようにこの「予言」を読み解いている。
「これは東京の汚染や人の心のエゴが、いずれどうしようもない末世状態になること、そのため首都機能を、(本来の東京のほか)七つもの都市に分散するようになることを示しているだろう」
環境汚染などに警鐘を鳴らしつつも、あくまで起きるのは「首都機能の分散」でしかないのである。ほかの箇所を見ても、五島氏はクハンダを、オゾン層破壊などの環境汚染の象徴として描いていることが読み取れる。
だが、五島氏が懸念したオゾン層問題はやがて沈静化、著書の副題となっている「1996年世界の大乱」も幸いにして起きなかった。そして『聖徳太子「未来記」の秘予言』は、無数に存在するオカルト本の一冊として、やがて忘れられていった。
だが2011年の東日本大震災後あたりから、「予言」部分のみが切り取られ、個人ブログやネットメディアなどで取り上げられるようになる。そしてその都度、「地震」や「放射能汚染」、はたまた「火山噴火」などを予言したものだ、と喧伝された。引用、孫引きを繰り返す中で、五島氏の著書が元ネタであることは無視される。さらに、SNSやYouTubeを通じて、日頃オカルトなどには興味のない人々にまで拡散していく。
こうやって「クハンダ」は、とてつもない怪物として、雪だるま式に巨大化していったのである。
(J-CASTニュース編集部 竹内 翔)