歴史が語る「若干の示唆」
いずれも、今とは時代背景が異なるので、軽々に歴史は繰り返すとは断言できない。しかし、若干の示唆もあると筆者は思っている。
(1)は、国際情勢にもかかわらず緊縮財政を言い過ぎた結果といえる。(2)は、若槻内閣の後を継いだ田中義一内閣の高橋是清蔵相が、モラトリアム(支払猶予令)と大量の日銀券増刷で昭和金融恐慌がおさまったことから、今の言葉でいえば、金融引締政策のためだと解釈できる。(3)は、いうまでもなく消費税が原因である。
これをあえて今のマクロ経済政策の財政政策と金融政策に置き直してみると、(1)と(3)は財政緊縮政策、(2)は金融引締政策がそれぞれ原因であると整理できる。
そこで、カギを握るのが、今年10月からの消費増税である。それが予定通りになると、6月30日から8月にかけて予定されている参院選で負け、安倍退陣というシナリオもありえる。
先の衆院補選での自民二連敗によりその予感がある。安倍側近の萩生田官房副長官も個人的見解としながら、消費増税の先送りもありえると発言した。
御代替りのあと、各種経済指標が出て経済悪化が認識されるだろう。6月末のG20が近づくにつれて消費増税見送りの機運も高まるだろう。
安倍政権は、新しい時代の門出を祝うために、消費増税を吹っ飛ばす可能性がある。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「この数字がわかるだけで日本の未来が読める」(KADOKAWA)、「日本の『老後』の正体」(幻冬舎新書)など。