旅券返納命令取り消し求め国を提訴 フリージャーナリスト常岡さんが会見

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   内戦下のイエメンを取材予定だったフリージャーナリストの常岡浩介さん(49)が、外務省から旅券返納命令を受けて出国できなかった問題で、常岡さんは2019年4月24日、旅券返納命令の取り消しなどを求めて、国を相手にした訴訟を東京地裁に起こした。

   同日、東京都千代田区の外国特派員協会で、常岡さんや代理人らが記者会見を開き、明らかにした。

  • 旅券返納命令の取り消しを求めて訴えた常岡浩介さん(中)
    旅券返納命令の取り消しを求めて訴えた常岡浩介さん(中)
  • 旅券返納命令の取り消しを求めて訴えた常岡浩介さん(中)

代理人「虚偽の事実に基づいて返納命令が出されている」

   訴状などによると、常岡さんは内戦下のイエメンで取材予定だった。18年12月19日にイエメンのビザ、26日にオマーンのe-visaをそれぞれ取得した。オマーン経由で入国を試み、19年1月14日現地へ到着したが入管で入国を拒否された。その後、スーダン経由で入国しようと30日に同国のビザを取得。2月2日に羽田空港でチェックインし、旅券を読み取り機にかざしてゲートを通過しようとしたが、「この旅券は登録されていません」という表示が出て、通過はできなかった。入管職員から「一般旅券が無効になっています」と告げられた。同日23時15分に一般旅券返納命令書が交付され、返納期限は23時20分と書かれていたという。2月8日に外務省から届いた通知には、返納命令の理由として、「オマーンにおいて入国を拒否され、同国に施行されている法規により入国禁止されている」と書かれていたという。

   代理人の清水勉弁護士は、「常岡さんはオマーンのe-visaを取得している。オマーンの入管でもオマーンの法規に違反しているので入国できないという説明を受けていない。虚偽の事実に基づいて返納命令が出されている」と主張。返納命令が出てから期限が5分しかなかったことにも触れ、「常岡さんのような立場の人には事前に聴聞・弁解の機会を与えないといけない。機会があれば、オマーンのe-visaが出ていることは簡単に証明ができ、返納命令が出されずに済んだ可能性が手続き的にはあった」としている。根本的な問題は、ゲートを通ろうとした際に旅券が登録されていないという表示が出たことで、「これは返納命令が出る前にデータ抹消されているということ。日本の法律では、返納命令が出た後でなければデータ抹消はできない」と指摘していた。

常岡さん「世界の状況を見る視野を完全に失ってしまうのではないかと危惧」

   常岡さんは、「人道危機の現場に関するニュースの絶対量が世界主要国に比べて、(日本では)極端に少ないということはご存知ではないかと思う」と強調。ニュースの量が少なくなり、状況の悪化を感じているといい、

「これをそのまま放置していきますと日本人、日本政府どちらにしても、世界の状況を見る視野を完全に失ってしまうのではないかと危惧している。今回の裁判は、わたくし自身の利益のためというより、日本が世界を見る視野を失おうとしている現状に少しでもブレーキをかけたい」

と提訴への思いを語った。

   15年1月にシリア北部で現場取材したという、当時朝日新聞記者で現ネットメディア「バズフィード」の貫洞欣寛記者からは、「17年夏にイラク北部でモスルが陥落し、大量の記者が入っている。モスルと2015年1月のシリア北部はISが撤退したばかりでほとんど同じ状況だったが、記者は誰も旅券返納命令を受けておらず、私もそう。あなたと杉本さん(フリーカメラマンの杉本祐一)に関しては旅券返納命令が出た。その違いは組織に属しているかいなかでは」と質問が上がった。

   常岡さんは「旅券返納命令が出された2件ともフリージャーナリスト」と回答。パキスタンで拘束され強制送還されたことや、ビザ申請をしたが断られた経験などを明かし、「そういった方はすべてフリーの方。会社員ジャーナリストの方でそういうケースは存じない」と話し、次のように語った。

「一度外務省の方とお話したとき、『大手メディアの人たちは会社が安全策などをとって保険に入るなりってことをするが、フリーの方にはそういった後ろ盾がないですからね』と言い方をされたことがあった。外務省側でもフリーランスとそうでない人の違いを意識していると感じた」(常岡さん)

   外務省旅券課の首席事務官は4月24日、J-CASTニュース編集部の取材に対し、「報道あったことは承知しているが、訴状を拝見しておらず、今の時点では何もお答えすることはない」と回答した。

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)

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