朝鮮半島の非核化をめぐる米朝交渉の膠着状態が続く中、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記が2019年4月24日17時頃(日本時間)、ロシア極東のウラジオストクに到着した。翌25日、プーチン大統領と初の首脳会談に臨むためで、制裁緩和に向けて支援を引き出す狙いがあるとみられる。
ここで注目されるのが、正恩氏が「専用列車で」ロシア入りしたという点だ。平壌とウラジオストクは国営高麗航空が定期便を飛ばしており、所要時間は約90分。それを丸1日程度かけて陸路で移動したとみられる。正恩氏は19年2月にベトナム・ハノイで米国のトランプ大統領と会談した際も、片道を約65時間かけて列車で移動した。このこだわりはどこにあるのか。
国境で台車を交換する手間もかかる
ロシアのタス通信によると、正恩氏は4月24日午前、北朝鮮との国境地帯にあるハサン駅に到着。ハサンで「金日成の家」と呼ばれる露朝友好の施設を訪れ、その後は沿海州の都市、ウスリースクに7時間かけて移動。そこからシベリア鉄道に入り、ウラジオストクに向かった。
13年には、ハサンと北朝鮮北東部の経済特区、羅先(ラソン)の羅津(ラジン)港を結ぶ鉄道の改修工事が終わり、北朝鮮はロシア側の投資を呼び込もうとしている。北朝鮮側は今回の北朝鮮国内の移動ルートを公表していないが、平壌-羅津-ハサンと移動したとみられる。
平壌からハサンまで約850キロ、さらにハサンからウラジオストクまでが約300キロ。仮に時速60キロ程度で走ることができたとしても、20時間程度かかる。さらに、北朝鮮の鉄道のレールの幅は大半が1435ミリの「標準軌」なのに対して、ロシアは1520ミリの「広軌」。国境を越える際に機関車と客車の台車を交換する必要があるため、さらに数時間かかるとみられる。それを考えると、平壌からウラジオストクまでは丸1日かかるとみていい。
北朝鮮の朝鮮中央通信は、正恩氏が「ロシアを訪問するために4月24日未明、専用列車で出発した」と報じているが、北朝鮮のどこを出発したかは明らかにしていない。23日中に平壌を専用車などで出発し、比較的国境に近い場所で列車に乗り換えた可能性もある。