なぜ「実名」は報道されるのか
ただ、そうなると気になるのは事故を起こした人物として「実名」で報じることとの整合性だ。J-CASTニュースのこの記事を含め、実名報道が相次いでいる。坂口弁護士は、
「罪を犯した人物として実名で報道するということは、報道の内容が真実であっても、その人物の社会的評価を大きく傷つけることになります。また犯罪事実は通常、人が公開を欲しない事柄です。そのため、実名報道は、名誉棄損やプライバシーの侵害になりえます。
それでも実名報道が許されているのは、犯罪事実の存在とともにその罪を犯した人物が誰であるかは、公共の利害に関する事実であると考えられているためです。
そうはいっても、全ての事件を実名報道することは、捜査機関も報道機関も謙抑的であり、実名報道をすべき公共の利害が認められる事件についてのみ実名で報道されています。例えば、殺人などの重大事件や振り込め詐欺などの社会問題となっている事件については、公共の利害に関する程度が大きいと考えられています。また、被疑者が公務員や政治家、著名人、大企業の従業員である場合についても同様です。
飯塚氏については、10人もの人が死傷している事件の重大性に加え、高齢者の交通事故という社会問題にかかわる事件であること、また元官僚という公的な側面があることから実名報道をすべきと考えられているのだと思います」
(J-CASTニュース編集部 青木正典)