それでも「24時間」手放しにくいコンビニ ビジネスモデル「根本的見直し」は可能か

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   コンビニの24時間営業に逆風が吹く中、業界最大手のセブン-イレブン・ジャパンの社長が突然交代した。

   事業環境が変化する荒波を乗り越えるために、経営体制を刷新する必要があるという判断だが、成長を支えてきたコンビニのビジネスモデルをどこまで見直すか、業界全体が問われている。

  • 見直しは果たして進むか(イメージ)
    見直しは果たして進むか(イメージ)
  • 見直しは果たして進むか(イメージ)

個々の店の経営はさておいても...

   コンビニの本部、加盟店の関係とビジネスモデルをおさらいしておこう。

   本部と店主のFC契約は、本部が提供する商品の販売ノウハウなどの対価として、FC店は売り上げから仕入れ原価を差し引いた粗利益に応じてロイヤルティー(加盟店料)を本部に支払う。FC店は粗利の残りから、従業員の給与や光熱費などの諸経費を払う。

   この仕組みは、本部にすれば、店を増やすこと、営業時間が長いことが売り上げを増やし、ロイヤリティも多くなるという成長モデルになる。個々の店の経営の良し悪しは別にしてチェーン全体の売り上げが増えればロイヤリティ総額が増えるのだから、本部は24時間営業を簡単に手放せない。出店についても、あまりもうからない場所でも店が増えればいいという理屈になりかねない。かくて、「無理な出店」問題はコンビニに常について回る。

   FC店では、店の立地問題に加え、人手不足の進展で深夜の従業員の確保が困難になり、雇うために時給を上げるなどで経営悪化、店主自身の長時間労働も深刻化している。

前社長は実質的な「更迭」か

   セブン-イレブン・ジャパンが2019年4月4日発表したトップ人事は、8日付で古屋一樹社長(69)が代表権のない会長に退き、後任に永松文彦副社長(62)が昇格するというものだった。永松氏は3月に副社長に就任したばかりで、わずか1カ月での社長昇格は極めて異例。会見に出席したのは親会社のセブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長と永松氏だけで、古谷氏の姿はなかったこともあって、事実上の更迭人事との見方がある。

   突然のトップ人事の背景にあるのが、24時間営業を巡る混乱だ。2月、大阪府東大阪市のフランチャイズ(FC)加盟店オーナーが、人手不足を理由にセブン本部の同意がないまま営業時間の短縮に踏み切り、本部が契約違反だとして対立、一部のFC店オーナーらも終日営業の見直しを求める声を上げた。24時間営業への社会の関心が高まるなか、経済産業省は、人手不足に対する行動計画を大手コンビニに要請する事態に発展。セブン側も、3月下旬以降、直営10店で営業時間を短縮する実証実験を始め、他のコンビニチェーンはセブン以上の規模で同様実験をするところもあるなど、各チェーンは対応に追われている。

「世論」は24時間にこだわらないが...

   コンビニ経営の効率の面でも24時間営業は根幹をなす。客が少なく、渋滞していない夜中に集中的に配送することは、コンビニのビジネスモデルに組み込まれているのだ。

   東大阪の一件以来、ネット上の投票などで24時間営業にこだわらない人が圧倒的だが、コンビニの仕組みを考えると、24時間をやめるのが容易でないことが分かる。

   セブンの社長交代発表の会見で、永松新社長は「各店の経営環境は大きく異なるので、営業時間についても柔軟に判断したい」と述べた。これまでFC店に一律に求めてきた24時間営業を、各店の経営環境に応じて柔軟に見直す意向を示した。ただ、同じ会見で、井坂HD社長は「(24時間営業は)根幹をなしており、それによって生活の基盤を得ている人もいる。検証もせず、拙速にやめてしまうとそうした人の生活基盤にリスクをおよぼす」と述べている。FC店が自由に営業時間を選べるようにするとはいかず、24時間の大原則は維持しつつ、個々の事情に応じて営業時間短縮の余地もつくるというのが、セブン本部の考えということだ。

部分的な柔軟化か、根本的な見直しか

   もちろん、FC店との関係の重要さは昔も今も変わらない。今回の社長交代について、井阪HD社長は「組織的なコミュニケーションのパイプの目詰まりがあった」と述べ、現場を掌握できていない状況への危機感をあらわにした。直接のきっかけが東大阪問題で、そうした現場の混乱について経営陣に正確な情報が伝わっていなかったとされる。永松新社長は人事畑でFC店の経営指導や労務管理に携わった経験が豊富で、FC店との信頼再構築に適任との判断があるとみられる。

   セブンに限らず、コンビニ各社はここにきて、出店の抑制と人手不足対策を軸としたFC店への支援強化に動く。セブンは2019年度の国内店舗の増加数を150店と、40年ぶりの低水準に設定。ローソンも同年度の店舗数は増減ゼロにする。FC店支援策では、セブンに限らず、セルフレジ(客が機械にバーコードを読み取らせて決済)の全店導入を打ち出したほか、スマホ決済の実験など、省人化に積極的に投資する方針を打ち出している。

   大手コンビニ各社はこうした対応で24時間営業の基本を守りたい考えだが、部分的な柔軟化で収まるのか、根本的見直しに進むのか、見極めるにはまだ時間が必要だ。

姉妹サイト