自社HVを「標準」にするとともに...
特許の開放により、これまでHVを手がけていなかった自動車メーカーの参入が進めば、中核部品である電池やモーターなどの生産数量が増えてコスト低減が進み、HVの普及が加速する。その結果、開発で先行するトヨタ本体だけでなく、部品を手掛けるグループ全体で販売拡大も可能になる。
欧州や中国など世界的に燃費規制が厳格化される中、自動車メーカー各社はEVやHVなどの電動車比率向上を目指している。だが、EVは航続距離やコストの問題など依然課題が多く、普及にはまだ時間がかかる。その中で、「HVが現実的な解」と見る向きは多い。
ここで問題になるのは、HV技術の覇権争いだ。HVの方式は現在、トヨタが採用する「ストロング型」と、燃費改善効果はストロング型より小さい「マイルド型」の2種類に分かれるが、最近はより簡易的で参入障壁が低い「マイルド型」を採用する自動車メーカーが増えている。今回の方針には、自社がリードする「ストロング型」をHVの標準にしたいとの狙いもある。
トヨタはHVで圧倒的な強さを誇る一方、EVの開発では出遅れてきた。だが、欧州や中国では、2040年までにガソリン車だけでなくHVも販売が規制される見通しで、トヨタの危機感は想像に難くない。今回の戦略転換には、この10年間はHVの市場拡大で乗り切り、その間にEV開発を急ピッチで進め、出遅れをカバーしたいとの思惑も透けて見える。