天皇陛下は「下町ロケット」がお好き? 平成後半の「ご視察」、中小企業に熱心だったワケ

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ベトナム留学生が起業した「未熟児の人工呼吸器」

   これらの企業の中には、知る人ぞ知る「下町ロケット」的な高度な技術と熱いドラマを持つところが少なくない。たとえば、埼玉県川口市にある医療機器メーカー「メトラン」(従業員40数人)は、南ベトナム(当時)からの留学生だったトラン・ゴック・フック氏(新田一福氏)が創業した、新生児の人工呼吸器専門の会社だ。フック氏はベトナム戦争が激しかった1968年に来日したが、サイゴンが陥落したため帰国できなくなり日本に帰化した。

   仕事に困って、何の知識もないまま飛び込んだのが医療機器メーカーだった。そこで、多くの未熟児が亡くなるのを見て、「赤ちゃん用の人工呼吸器があれば助けることができる」と開発に着手。現在、日本の「新生児用集中治療室」(NICU)の9割でこの人工呼吸器が使われている。わずか300グラムで生まれた赤ちゃんの命を助けた実績もある。日本の新生児生存率を世界トップ水準に引き上げた会社として、いくつかのメディアに紹介されている。

   千葉市若葉区にある「オーエックスエンジニアリング」は車いすの専門メーカー。普通の手動型から電動タイプ、さらに競技用の高機能車いすまで多くのタイプをそろえている。車いすテニスやバスケット、マラソンなど、パラリンピック選手の多くがこの会社の製品を使っている。また、事故で下半身を失った犬や、足腰が弱った老犬の車いすも、それぞれの犬に合わせて製作している。

   こうした企業を陛下は「大切な仕事なので頑張ってください」「細かい作業なので大変ですね」と従業員1人1人に声をかけて回られていた。

   ところで、宮内庁ホームページの「企業ご視察

   には毎年の視察企業の一覧が載っているが、面白いことに気づく。平成2年(1990年)から平成10年(1998年)までは名だたる大企業ばかりが並ぶ。旭硝子、東京電力、花王、日産自動車、石川島播磨、日本電気、レナウン、新日本製鐵、大日本インキ、凸版印刷、ソニー、王子製紙といった顔ぶれだ。

   ところが、平成11年(1999年)の「岡本硝子」(千葉県柏市・従業員約200人)を境に、一転して中小企業ばかり続く。岡本硝子は液晶化ガラスのベンチャー企業で、歯科治療の反射鏡のシェアでは世界の80%を誇り、無人深海探査装置「江戸っ子1号」の開発でも知られる。翌年から「山下電気」(品川区)、「東日製作所」(大田区)、「トックベアリング」(板橋区)、「スタック電子」(昭島市)、「住田光学ガラス」(さいたま市)...と、世間的にはあまり知られていないが、高い技術力を誇る会社ばかり訪問されている。

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