安倍晋三首相の側近から消費増税をめぐる巨大な観測気球が上がり、永田町では衆院解散を前提にした発言が相次いだ。
ただ、野党では小選挙区の候補者調整は協議すら始まっていない状況で、「安倍政権を倒す絶好の機会」「現状を打破しないと野党は大敗」といった様々な声が交錯している。
本人は「軌道修正」も...やはり観測気球か
観測気球の主は、自民党の萩生田光一幹事長代行だ。2019年4月18日配信のネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」(DHCテレビ)で、7月1日公表の日銀短観を念頭に、
「6月の数字をよく見て、本当に『この先危ないぞ』というところが見えてきたら、崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかないので、そこは、また違う展開はあると思う」
「(増税を)やめるとなれば、国民の皆さんの了解を得なければならないから、信を問うということになりますよね」
などと述べた。ただ、7月4日公示、21日投開票が見込まれる参院選とのダブル選については、主要20カ国・地域(G20)首脳会議が6月28~29日に予定されていることを理由に「なかなか日程的に難しい」と否定的だ。萩生氏は4月19日になって「私個人の見解を申し上げた」と軌道修正を試みたが、首相側近の一人として知られる人物の言だけに、「観測気球」だと受け止められていることには変わりない。
ノリノリ福山氏、困った玉木氏
4月18日の時点で、野党からは解散総選挙を前提にした発言が相次いだ。共産党の志位和夫委員長は、
「(増税)断念に追い込む戦いを、いよいよ強めたい。にもかかわらず増税に突っ込むというのであれば、審判を下して安倍政権もろとも、増税の動きは吹き飛ばすという決意で頑張りたい」
と話し、立憲民主党の福山哲郎幹事長も
「我々としては、解散をするなら堂々と受けて立ち、野党で協力して安倍政権を倒す絶好の機会を得ることができると考えている」
と前向きだ。一方、国民民主党の玉木雄一郎代表のツイートは、
「消費税増税先送りを口実にした衆参同日選の可能性が高まったと言える。政権はバラバラな野党の現状を見透かしているのだ。速やかに現状を打破しないと野党は大敗する」
と、悲観的に見える。
参院選も「このままでは、1人区で、いったいどれだけとれるのか」
立憲民主党会派の岡田克也衆院議員は4月19日午後、福山氏と玉木氏の温度差について、「(萩生田氏の)発言に関する2人のコメントで、決して矛盾していないと思う」とみるが、
「玉木さんも現状を客観的に見るんじゃなくて、自分も当事者ですから、『じゃあどうするか』ということをしっかり考えてもらわなきゃいけない。枝野(幸男・立憲民主党代表)-玉木でしっかり考える、というのが基本」
などとして、候補者調整を急ぐように求めた。岡田氏は参院選についても
「擁立が進んでいないのもあるし、擁立が終わったところも戦える態勢になっていないところが結構ある(中略)このままでは、1人区で、いったいどれだけとれるのか。大変心配している」
と危機感を示している。
衆院選の候補者調整をめぐっては、枝野氏が4月17日に出演したラジオ番組「岩瀬恵子のスマートNEWS」(ラジオ日本)で、統一地方選終了後に各党に対して協議を呼びかける考えを示したばかりだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)