北朝鮮の国営メディアは2019年4月18日、朝鮮労働党の金正恩委員長が17日に行われた「新型戦術誘導兵器」の発射試験を視察したと報じた。正恩氏は16日に航空部隊の訓練を視察したばかりで、2日連続の軍関係の視察だ。
国営メディアは4月18日午前時点では写真や動画をつけずに報じており「戦術誘導兵器」の詳細は明らかになっていないが、核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)をはじめとする「戦略兵器」とは別物の従来型兵器だとみられる。核兵器の開発再開を明言するのは避ける一方で、制裁解除に向けた動きが見えない米国をけん制する狙いもありそうだ。
「戦略兵器」と「戦術兵器」を明確に区別
正恩氏による軍の訓練や施設の視察が伝えられるのは18年11月以来5か月ぶり。今回の「新型戦術誘導兵器」の「設計上の指標」には「特殊な飛行誘導方式と威力ある戦闘部の装着によって優れたものに評価されるか」といったものがあったといい、試験でそれが「完璧に検証された」としている。
正恩氏は「戦略兵器を開発していた時期もつねに敬服したが」と前置きした上で、実験に携わった技術者らをねぎらっている。「戦略兵器」と「戦術兵器」を明確に区別していることが分かる。
北朝鮮が17年2月に中距離弾道ミサイル「北極星2」を発射した際は、「朝鮮式の新しい戦略兵器システムである地対地中・長距離戦略弾道ミサイル」だと紹介している。これに対して、18年11月の軍施設視察が報じられた際の報道は、今回同様の「国防科学院の試験場を訪れて新しく開発した先端戦術兵器試験を指導した」というものだ。
先端戦術兵器は「忘れ形見の兵器同様」
この視察の際、正恩氏は
「金正日総書記が生前に直接、種をまいて特別な関心を払い、開発、完成へと温かく導いてきた兵器システムがとうとう誕生した。あの兵器は忘れ形見の兵器同様であるが、今日のこの成功を見ると総書記への思いがさらに募る」
などと感激しながら述べたという。
北朝鮮は準中距離弾道ミサイル「ノドン1」の発射試験を、金日成主席が死去する1か月ほど前の1993年5月に行っており、金正日総書記の時代に開発を加速させたという経緯がある。こういった経緯と18年11月に報じられた正恩氏の発言を踏まえると、今回報じられた「戦術兵器」は短~中距離ミサイルを指している可能性がある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)