新紙幣が2024年を目標に導入されると発表された。
ここ最近でQRコード決済などが話題にのぼることが増えたが、インターネットでは「キャッシュレス化の流れに逆らっているのでは」との指摘もある。しかし、お札が変わることで、むしろキャッシュレス化が進みそうな見方もできる。
過去の改定時には「特需」があった
新紙幣は24年度上期、新硬貨は21年度上期をメドに発行される。ともに大きさは変わらないが、自動販売機や券売機などを対応させる必要が出てくる。「買い替え需要」を見込んで、発表会見当日の19年4月9日には、通貨処理機メーカーのグローリー(兵庫県姫路市)や、日本金銭機械(大阪市平野区)などの株価が急騰した。
紙幣が現在の顔ぶれになった04年の改定では、サイズの変更もあったため、メーカーには「特需」があった。今回はサイズが変わらないため、システムのアップデートのみで対応できる場合には、そちらを選ぶ店舗もあるだろう。しかし、その場合にもメーカー側が「買い替え」を売り込む可能性は大いにある。
前回500円硬貨が刷新された時にも、硬貨識別機の特需が起きた。発行から4か月後の日経流通新聞(00年11月15日付)では「新500円硬貨対応で明暗」の見出しで、トップシェアのメーカーがソフト書き換えを中心に対応した一方、2位以下のメーカーは新製品への買い替えを顧客に促し、結果として「一矢報いている格好になっている」と伝えている。
「ご一緒にキャッシュレスもいかがですか」戦術?
当時は、自販機に硬貨を入れた後、返却レバーを押すと、入れたものとは別の硬貨が返ってくる機構が主流で、偽造硬貨が出回る温床になっていた。それを、入れた硬貨をそのまま返却する機構に変えて、新機種として売り出したところ、需要が増えたのだという。この時は防犯面を売りにしていたが、いまなら「ご一緒にキャッシュレスもいかがですか」といった具合だろうか。
政府方針も、その背中を押す。経産省が18年4月に出した「キャッシュレス・ビジョン」では、大阪万博が行われる25年までに、キャッシュレス比率を現状の2割から、4割程度に倍増させる目標だ。新紙幣とからめて、機種導入を後押しする施策が行われれば、さらなる追い風となるだろう。
このビジョンでは、将来的に「世界最高水準」の8割まで、比率を高めることを目指している。新紙幣発表翌日(19年4月10日)の日本経済新聞(東京版)は、1面で「今回が実質的に最後の紙幣刷新になる可能性は否定できない」と伝えたが、果たしてどうなるのだろうか。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)