原発事故を受けて韓国が福島など8県の水産物の輸入を禁止している問題で、世界貿易機関(WTO)は2019年4月12日(日本時間)、韓国側の措置を容認する報告書を発表した。日本は韓国の措置は科学的根拠がないとしてWTOに提訴。1審にあたる紛争処理小委員会(パネル)では、韓国側の対応がWTOの「衛生植物検疫(SPS)」協定が禁じる「恣意的または不当な差別」に当たると判断していたが、最終審にあたる上級委員会による今回の判断では、それが覆された。
日本側にとっては予想外の「逆転敗訴」で、韓国メディアは「終盤で『逆転負け』を喫し大騒ぎになった」などと日本側の狼狽ぶりを伝えている。
日本メディアは勝訴の見通しを伝えていた
河野太郎外相はWTO報告書の発表直後に
「韓国の措置が協定に整合的であると認められたわけではないが、我が国の主張が認められなかったことは誠に遺憾」
などとする声明を発表。韓国との協議を通じて、引き続き措置の撤廃を求めていく考えだ。韓国政府は、WTOの決定を「高く評価し歓迎の意を表する」としている。
韓国メディアは、日本メディアが勝訴の見通しを報じていたことを指摘しながら、
「予想とは異なり、日本が逆転負けしたことに戸惑いを隠せずにいる」(ニューシース)
「終盤で『逆転負け』を喫し大騒ぎになった」(ソウル経済)
「貿易紛争で逆転負けして当惑している」(ハンギョレ新聞)
「日本はWTOの判定を受け入れるのが難しいという雰囲気だ」(朝鮮日報)
などと様々な言葉で日本の反応を伝えた。
日本からのWTO提訴だったが...に
朝鮮日報などは、日本産の水産物輸入を制限しているのは約50か国あるにもかかわらず、日本が提訴したのは韓国だけだという点を指摘。日本政府としては、韓国への勝訴を突破口に他の国にも輸入制限の撤廃を訴える考えだった。だが、「ソウル経済」は
「これまで自国の農産物の安全性を国内外に強調し、福島の『復興』を狙っていた日本政府は、自ら提起したWTO提訴がむしろ農産物の輸出に打撃を与える結果に終わったことについて慌てている」
として、その狙いが裏目に出たことを伝えている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)