大阪ダブル選挙では府知事・市長について、維新側の吉村・松井、反維新の小西・柳本の戦いだったが、維新側の吉村・松井の完勝だった。
投開票日(2019年4月7日)の投票締め切りの20時直後に、NHKから当確が出たほどの維新の圧勝だった。事前の世論調査では、大阪市長選挙では接戦とも報じられていたが、蓋を開ければ、改めて大阪で維新は強かった。
大阪府議は過半数越え
大阪市長選挙に対するある出口調査では、維新支持のほぼ10割、自民支持の3割、無党派層5割が松井氏に投票したという。大阪都構想に賛成する人は全体の6割だったという。大阪府知事選での出口調査でも、大阪都構想に賛成する人は6割以上だった。
最終的には、大阪府知事選で吉村氏226万6103票、小西氏125万4200票、大阪市長選で松井氏66万819票、柳本氏47万6351票とそれぞれ大差がついた。
今回のダブル選は大阪都構想が争点であった。これまでの府市での行政実績も十分あり、さらに2025年万博と夢洲IRという将来への布石も打ってきた維新が負けるはずないと思いながら、選挙は水もので一抹の不安はあったが、やはり大阪府市民は賢明な選択をした。
大阪都構想を具体的に進めるためには、大阪府議会と大阪市議会の両方が住民投票に賛成しなければいけない。その上で、住民投票で過半数をとる必要がある。この意味で、大阪都構想の実現にはまだハードルが残っている。
今回、ダブル選挙と同時に行われた大阪府議会議員選挙と大阪市議会議員選挙であるが、大阪府議会では定数88のところ、維新51をとったので過半数を超えた。しかし、大阪市会では定数83のところ維新40なので、2人だけ過半数には足りなかった。
しかし、大阪府民と市民の民意を確認できたので、それを背景として大阪都構想に弾みをつけたいだろう。
国政における「ダブル選勝利」の意味
松井維新代表は、選挙後に、大阪都構想に反対の人もいるのも事実なので、丁寧に説明していきたいと話した。大阪都構想のための住民投票にこぎ着けるには、大阪府議会と大阪市議会の賛同が必要なので、今後は住民投票に向けて大阪市議会での多数派工作を続けるのだろうし、今回示された民意が後押しするだろう。
維新は、これまでの10年間でも大阪経済を浮揚させてきた。景気も雇用も10年前と比べてよくなった。2025万博や夢洲IRも、これまでの路線通りであるので、これを起爆剤として、今後の大阪経済も発展するだろう。
国政から見ても、大阪ダブル選で維新の勝利が意味がある。国政では、維新は今年10月からの消費増税反対であるが、反維新の自民と公明は消費増税を推進している。自民の中で、官邸はまだ最終的な決断をしていないものの、自民の大半と公明はほとんど財務省の追随である。もし、大阪ダブル選挙で、反維新が一つでも勝利したら、10月からの消費増税を大阪府市民が望んでいるという間違ったメッセージを与えかねなかった。
これから参院選の前哨戦ともいわれる衆院大阪12区補欠選挙(大阪府寝屋川市、大東市、四條畷市)がある。候補者は、無所属元職の宮本岳志氏(59=共産、自由推薦)、日本維新の会新人の藤田文武氏(38)、無所属元職の樽床伸二氏(59)、自民新人の北川晋平氏(32=公明推薦)の4氏。常識的には弔い合戦なので北川氏有利だろうが、消費増税は争点になりうるし、なったら面白くなる。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『消費増税』は嘘ばかり」(PHP新書)、「この数字がわかるだけで日本の未来が読める」(KADOKAWA)など。