フィリピンへの「恩返し」はカキ養殖 台風ヨランダ被災地に技術伝える【震災8年 海外とつながる(最終回)】

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現地事情に合わせ、長く続けられるように

   現地では既にQIPとして、カキ養殖が行われていた。淡水と海水が混じり合う「汽水域」が育成に適しており、実際にそのような場所で行われていたが...。

「同行した養殖業者からすぐに『この場所じゃダメです』と言われました」

と四倉さん。汽水域ではあるが、過去に大雨が降った際に川の水が流れ込んで塩分濃度が低下し、カキが全滅した経緯があったのだ。場所を変え、養殖に必要な塩分濃度を測る装置を使うような基礎的な指導からスタートした。

   現地の事情に合わせた方法も指南。例えば養殖設備の「フロート(浮き)」は簡単に手に入るプラスチックのドラム缶を代用。安価な資材を活用し、長く続けられる環境づくりを提案した。フィリピンの女性たちには、カキの加工方法を専門業者が指導するワークショップを開いた。

   もともと養殖のノウハウは現地になく、漁協のような共同組織も存在しなかった。作業は試行錯誤の連続だ。それでも四倉さんらは「天然のカキを取り尽くす漁業では、今に破たんする」と養殖の大切さを説き続け、現地の人が長く続けられて収入アップにつながる方法を模索した。カキの成長には最低10か月はかかる。失敗も少なくなかったが、「現地の漁業者の意識は向上していきました。自分たちで工夫したり、別の集落の漁業者同士が共同作業したりと、学んだことを生かそうと懸命に取り組んでいました」。

   プロジェクト自体はこの3月で終了。3年間でカキ養殖と加工法を教え込み、カキを一定量収穫できた。道筋はつくれたと四倉さんは感じている。養殖の各種データを現地に残し、「あとはフィリピンの水産庁が、これをモデルケースとして各地に広げていってくれれば」と願う。東松島市で同プロジェクトの窓口を務めた復興政策部の川口貴史さんは、「一過性の支援ではなく、持続可能なものとして技術を伝えられた意義は大きいと考えられます」とコメントした。

   四倉さんは今後、3年間の経験を生かして、例えばカキ養殖のマニュアルのようなものをイラストで分かりやすく作成し現地で配布したり、今回指導した現地の行政担当者や漁業者を講師として別の集落に伝えてもらったりと、普及に貢献できればと考えている。(おわり)

(J-CASTニュース編集部 荻 仁)

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