フィリピンへの「恩返し」はカキ養殖 台風ヨランダ被災地に技術伝える【震災8年 海外とつながる(最終回)】

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   近年、世界でさまざまな自然災害が発生し、各地に被害をもたらしている。一方で、被災地の間では国境を越えた支援や交流が生まれてきた。

   東日本大震災で大打撃を受けた宮城県石巻市と東松島市。水産業が盛んなこの地域から、2013年の巨大台風の被災地・フィリピンにカキ養殖の技術を提供する試みが行われた。

  • フィリピンでのカキ養殖指導の様子(写真提供:いしのまきNPOセンター)
    フィリピンでのカキ養殖指導の様子(写真提供:いしのまきNPOセンター)
  • フィリピンでのカキ養殖指導の様子(写真提供:いしのまきNPOセンター)
    フィリピンでのカキ養殖指導の様子(写真提供:いしのまきNPOセンター)
  • フィリピンの子どもたちと一緒に写る四倉禎一朗さん(写真提供:いしのまきNPOセンター)
    フィリピンの子どもたちと一緒に写る四倉禎一朗さん(写真提供:いしのまきNPOセンター)
  • フィリピンでのカキ養殖指導の様子(写真提供:いしのまきNPOセンター)
  • フィリピンでのカキ養殖指導の様子(写真提供:いしのまきNPOセンター)
  • フィリピンの子どもたちと一緒に写る四倉禎一朗さん(写真提供:いしのまきNPOセンター)

大統領自ら石巻へ

   中心気圧は最大895ヘクトパスカル、スーパー台風と化した2013年の台風30号。日本には直接影響はなかったが、フィリピン中部のレイテ島やサマール島を直撃した。津波のような高さ5~6メートルの高潮が住民を襲い、死者・行方不明者は約8000人に達した。この台風は現地語で「ヨランダ」と名付けられた。

   フィリピンは、東日本大震災時の支援国のひとつだ。2011年9月、当時のアキノ大統領が石巻市役所を訪れ、100万ドル(約1億1000万円)を寄付する旨の書簡を石巻市長に手渡した。これに対してヨランダ発生後、日本政府は国際緊急援助隊医療・専門家チーム、自衛隊をフィリピンに派遣し、緊急無償など約53.1億円の資金協力を行ったと国土交通省の資料にある。

   日本とフィリピンはいずれも海に囲まれた島国で、地震や台風と自然災害が多い。一方、水産業が盛んなのも共通点だ。被災地の石巻市や東松島市から、フィリピンの水産業復興への「恩返し」ができないかとの動きが生まれた。

   柱となったのは、国際協力機構(JICA)の事業だ。ヨランダ発生後、JICAは「QIP」という緊急支援プロジェクトとして、フィリピンに日本の技術を導入し、被災前より良い街づくりを目指して活動していた。そのひとつに、カキ養殖の技術指導があった。QIPは2016年3月末に終了するため、これを引き継ぐ形をつくろうと、東松島市がカキ養殖と水産加工品づくりにおける人材・技術提供の計画を「JICA草の根技術協力」というプログラムに申請。承認を受けると、同市は「いしのまきNPOセンター」(石巻市)に実施を依頼した。

   いしのまきNPOセンター専務理事の四倉禎一朗さん(54)は2014目にフィリピンを視察し、帰国後はレイテ州水産担当職員とやり取りを重ね、2016年6月、石巻と東松島のカキ養殖業者と水産加工業者を連れて技術指導に向かった。

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