基調の「茶色」との調和を考慮
西洋化の影響を受けたいわゆる近代建築が紙幣に登場したのは、終戦直後となる1946年発行の10円札で、国会議事堂が描かれた。1951年発行の50円札には日本銀行旧館が採用されたが、この2つ以外に近代建築の例はない。まして、日本全国で使える紙幣に「東京」という都道府県名が入った建物がデザインされたことはない。こうした点からも上記のように一部ネットユーザーは「地域色」の強さを感じたのかもしれない。
東京駅が選ばれた理由について、財務省の担当者は19年4月9日のJ-CASTニュースの取材に「発表資料に記載の通りですが、明治・大正期を代表する建築物の1つであることなどが大きな理由です」とした上で、別の観点からもこう話した。
「1万円券は基調の色が『茶色』なのですが、裏面のデザインについてもこの基調の色との調和も考慮する必要がありました。他にも偽造防止の点など、さまざまな要素を盛り込んで東京駅に決まりました。
また、昔は空港がなかったので、言ってみれば東京駅が『東京の玄関』にとどまらず『日本の玄関』としての役目も果たしてきたと聞いています」
なお新1万円札の東京駅をめぐっては、表面の渋沢栄一との関係も取り沙汰されている。駅舎は、かつて埼玉県深谷市にあった企業「日本煉瓦(れんが)製造」が生産した赤レンガを用いて建造されており、この「日本煉瓦製造」の設立者が渋沢栄一であるためだ。
こうした関係まで考慮して新1万円札の表裏をデザインしたのかについて財務省に聞いてみると、「結果的にこうなったというところです。それを理由に組み合わせが決まったわけではありません」と話していた。