選考会上位でも、東京五輪に出られない? 陸上、競泳...厳しい「標準記録」の壁

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   競泳の日本選手権が2019年4月8日、全日程を終了した。今大会は7月の世界選手権(韓国・光州)の代表選考会を兼ねており、個人の五輪種目においては日本水泳連盟が設定する「派遣標準記録」を突破し2位内に入った選手が世界選手権の代表に決まった。

   世界選手権で金メダル獲得ならば2020年東京五輪代表に内定するだけに、大きな意味を持つ大会だったが、上位入賞者で「派遣標準記録」を突破出来なかった選手が続出するなど、異常事態に見舞われた。

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日本水連が課すハードな「記録」の背景は

   このような事態に陥った背景にあるのが、他競技にはみられない日本水連の厳しい方針にある。「派遣標準記録」は日本水連が独自に定めるもので、国際水連が設定するものよりも高いレベルのもの。国際大会に出場する「資格」を高く設定することで、出場するすべての選手が決勝に進出できるレベルの少数精鋭集団となる。派遣にかかる費用を抑えるという側面はあるものの、ハードルを上げることで全体のレベルアップにつながっている。

   今大会で象徴的だったのが、女子200メートル平泳ぎだろう。前回大会の2016年リオデジャネイロ五輪で金藤理絵さんが金メダルを獲得するなど、日本が得意としてきた種目のひとつだ。20年東京五輪でもメダルの期待がかかるが、優勝した渡部香生子(22)=JSS=は約1秒、「派遣標準記録」に及ばず代表決定に至らなかった。今大会で代表に選出されなかった選手は、世界選手権選考会の5月のジャパンオープンで再び記録の壁に挑むことになる。

   「記録」に関してマラソンも一つの問題を抱えている。今年3月に国際陸上競技連盟(IAAF)が、20年東京五輪の出場資格に関する方式を発表した。これまで同様に参加標準記録を設定し、これに加えて新たにランキング制度を導入。これにより、今年9月に予定している代表選考会、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で日本陸上競技連盟(JAAF)が定める条件をクリアしても代表に内定しない可能性も出てきた。

   国際陸連が定める参加標準記録は、男子が2時間11分30秒、女子は2時間29分30秒となっている。対象の期間は2019年1月1日から2020年5月31日となっており、この期間で記録をクリアしていない選手がMGCで優勝、準優勝した場合、20年5月までに対象レースで参加標準記録を突破する必要があるとみられる。今後、日本陸連が国際陸連に対して何らかのアクションを起こす可能性もあるが、現時点では不透明だ。

参加選手「縮小」しつつ競技増やすIOCの矛盾

   陸上競技全体で見ても、参加標準記録は前回大会の16年リオデジャネイロ五輪よりも格段にレベルアップしている。肥大化する五輪のスリム化を図る目的で、国際オリンピック委員会(IOC)が推し進める参加選手の「縮小」の影響を受けた形だが、一方でIOCの矛盾点も。20年東京五輪では前回大会の28競技、306種目を上回る33競技、339種目が行われる予定で、参加選手の数は若干減るとみられるが、前回大会同様に1万1千人以上が見込まれる。

   96年アトランタ五輪で初めて参加選手が1万人を超え、00年シドニー五輪では実施種目が300に到達。96年アトランタ五輪以降、1万人を割ることはなく16年リオデジャネイロ五輪で初めて1万1千人を記録し、大会運営の管理、円滑な進行の観点から五輪のスリム化がIOCの大きな課題となっている。競技に関しては「新陳代謝」がなされつつあり、スケートボードやサーフィンなど若者向けの競技を新たに取り入れる一方で、伝統競技のボクシングなどが廃止の危機にさらされている。

   陸上競技に限らず、参加選手の多い競技から種目を減らそうとする動きはたびたびメディアで取り上げられてきた。陸上のようなタイムを競う競技においては参加標準記録が引き上げられ、そうでない競技においてはアジア、欧州など地域予選を勝ち抜いて代表枠を獲得するというのが主流となっている。既存競技の参加人数を抑えつつも新たな競技を追加することで、依然として五輪の肥大化に歯止めがかかっていない。84年ロサンゼルス五輪を境に確立されたといわれる商業五輪。いつの時代もツケを払わされるのは選手にほかならない。

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