4年に1度の統一地方選挙。2019年4月7日には、その前半戦が行われた。
この日投開票された11の道府県知事選のうち、自民系候補が複数出馬する「保守分裂」になったのは、徳島、福井、福岡、島根の4県。自民党本部と県連・地元議員らが、それぞれ候補を擁立したのだが、その結果は「2勝2敗」となった。
麻生副総理の支持候補は落選
多選の現職に、新人が挑む。徳島県知事選では、自公県組織の推薦を受けた現職の飯泉嘉門氏(58)が、地元選出の後藤田正純衆院議員(自民)が支援する岸本泰治氏(61)と、共産新人の天羽篤氏(68)を破り、5選した。
福井県知事選では、現職の西川一誠氏(74)が、自民推薦を受けられず敗れた。西川氏は03年に初当選。15年の前回選挙では、与党(自公)と、当時の民主党の県組織が「相乗り」で推薦していた。しかし今回は、自民が新人の杉本達治氏(56)を推薦。一部の自民県議は西川氏を支援して、分裂となった。結果として、杉本氏が西川氏、共産新人の金元幸枝氏(61)を下し、初当選を果たした。
福井と同様に、かつて自民が推薦した現職に、みずから「刺客」を放ったのが福岡県知事選だ。前回選挙では、現職の小川洋氏(69)が、自民、公明、民主、維新、社民の推薦を受けて、共産系の候補を下した。しかし今回、自民は、地元選出の麻生太郎副総理兼財務相が支援する武内和久氏(47)を推薦。選挙期間中には、武内氏の応援演説に立った麻生派の塚田一郎国交副大臣(当時)による「忖度発言」が話題に。結果として、小川氏が武内氏と、共産推薦の篠田清氏(70)を下して3選した。
大阪では自民支持者が「維新」に流れる
これら3つの選挙は、NHKの開票速報では「ゼロ打ち」(投票締め切りの20時時点=開票率0%で当選確実が出ること)となったが、残る島根県知事選で、丸山達也氏(49)に当確が出たのは、21時50分ごろ。ここでは現職は出馬せず、保守系の新人同士が対決する構図になった。
15年の知事選では、現職の溝口善兵衛氏(73)が自民の推薦を受けていたが、今回の任期満了で引退。自民は大庭誠司氏(59)を推薦し、県選出の国会議員も支援したが、自民県議の半数が丸山氏側についた。結果として丸山氏は約15万票を集め、約12万票の大庭氏、元安来市長の島田二郎氏(65)、共産推薦の山崎泰子氏(57)を下した。
自民の「分裂」という意味では、維新が勝利した「大阪ダブル選」もそうだ。大阪市長選では、自民支持者が一定数、自民推薦の新人・柳本顕氏(45)ではなく、維新新人の松井一郎前知事(55)に投票したと報じられた。その割合は、朝日の出口調査で33%、産経では50%にものぼる。
一方、北海道知事選では「野党統一候補」を破る
「分裂」が目立ちつつも、総じて優勢に選挙を終えた自民に対し、「共闘」を果たした野党は、一方で結果を残せなかった。北海道知事選では、前夕張市長の鈴木直道氏(38)と、元衆院議員の石川知裕氏(45)の一騎打ち。鈴木氏は自民、公明、新党大地が、石川氏は立民、国民、共産、自由、社民が推薦したが、結果は鈴木氏の勝利となった。加えて、41道府県議選で自民は、全議席数(2277)の過半数となる1158議席を獲得。15年の獲得議席数を上回り、改めてその存在感を示した。
自民党の二階俊博幹事長は19年4月7日夜の会見で、
「我が党の推薦候補は、各地で安定した勝利を収めている一方、県連が分裂したところは、当たり前のことではありますが、厳しい結果が出ております。これは今後の大いなる反省材料だと思っております」
とする一方で、北海道知事選を制したことは「我が党にとって大変大きなこと」とした。甘利明選対委員長も「幹事長の発言にすべて尽きている」としつつ、大阪ダブル選での敗北については、
「改革に前向き(な維新)、あるいは現状を守る(それ以外の政党)ということの受け取り方をされてしまった。自民党は『改革政党』であることは間違いないのでありますけれども、メッセージの伝え方にもう少し工夫が必要だった」
と補足した。
4月21日には統一地方選の後半戦と、衆院沖縄3区、大阪12区の補選がある。これらは今夏に行われる参院選の前哨戦にもなるため、与野党ともに気を抜けない。なお、今回行われた神奈川、三重、奈良、鳥取、大分の5県知事選では、与野党相乗り、もしくは事実上の相乗りで現職が再選した。