なぜ日銀が苦しくなる?
3月7日の理事会では、政策金利を据え置く期間をこれまでの「2019年夏まで」から「2019年末まで」に変更。ユーロ圏の成長率見通しも引き下げた。
中国人民銀行は2018年以降、金融機関から預金の一定割合を強制的に預かる「預金準備率」の引き下げを実施してきた。金融機関の手元資金を増やし、融資の増加を促す政策だ。2019年3月15日に閉幕した全国人民代表大会では、2019年の経済成長率目標を昨年の「6.5%前後」から「6~6.5%」に引き下げており、景気刺激のため緩和的な環境は続きそうだ。
なぜ日銀が、こうした各国の情勢に振り回されることになるのか。というのもこれまでは、FRBをはじめとする他の中銀が利上げを進めれば、相対的に高い利回りを求めてドルなどの通貨が買われ、円安が進むと想定できた。円安は輸出企業の海外の利益をかさ上げし、株価や賃金の上昇につながるとの期待もあった。
ところが同じ方向を向いて走るとなると、既に力を出し切り、緩和レースの先頭を走る日銀と、これからギアを入れる他の中央銀行との差が縮まることが想定される。金利差は縮小し、円高圧力がかかりやすくなるのだ。
日銀は、マイナス金利の拡大や上場投資信託(ETF)の買い入れ増大など、追加緩和の手段はあると「強弁」する。しかし、これらは金融機関の収益の悪化や、市場の価格形成機能の低下などの副作用も大きい。「FRBには利下げに転じてほしくない」が本音の日銀にとって、苦難の道が続く。