KADOKAWAとはてなが運営する小説投稿サイト「カクヨム」が2019年4月1日、小説投稿者が収益を得られるシステムを導入すると発表し、ユーザーから注目が集まった。
収益の仕組みは「広告の売り上げを渡す」方法と「読者が作者にお金を支払う」方法の2本柱を検討。ツイッターでは「モチベーションアップになりそう」「ウェブ小説プラットフォームの、時代の流れを感じます」と期待が高まる。KADOKAWAはJ-CASTニュースの取材に対し、取り組みの背景について「『書籍化』以外にもどういう価値を提供できるかを常に考え続けていくのがサイトの使命と捉えています」と話す。
「書籍を出版できるかどうか、1か0かの世界だったと思います」
「カクヨム」では誰でも無料で小説を投稿できるほか、読者は作品に対し応援コメントや評価を付けられる。16年2月にオープンし、発表によると18年1月からの1年間で閲覧数が2倍増という成長の1年となった。
新たな試みは「Web小説を書く人が直接収益を得られる環境作り」だといい、具体的には(1)広告の売上を渡す仕組み(2)読者から作者へ直接お金を支払う仕組み――の導入に取り組んでいる。
(1)は「なるべく読書の邪魔にならない箇所に広告を掲載して、その表示回数や貢献度などに応じて作者の方へ広告売上をお渡しするような形」を想定しており、19年秋に開始予定。(2)は小説の有料販売や、読者が何らかの形で作者に金銭支援できる機能の整備を検討しており、読者と作者の交流の場としたい考えだ。
背景には小説界を取り巻く環境への課題意識があるようだ。「多くの方は創作活動とは別のお仕事や学業などの本業をお持ちで、少ない時間を工面して創作活動を続けています。そんな方々を応援し、創作活動をずっと続けられる環境を作る。がんばって書いた小説が少しでも報われるような、そんな環境」の構築を勧めるという。また、小説執筆の収益化は「書籍を出版してその印税を受取るという方法が一般的で、書籍を出版できるかどうか、1か0かの世界だったと思います」として、「1と0の間に新しい段階を設け、創作活動の間口を広げる」ことを目指す。
「YouTuberの様な専業作家が、この形態で増えれば...」
こうした取り組みにはツイッター上で、
「(2)の『読者から作者へと直接お金を支払える仕組み』は、読者がいわゆる『パトロン』になるということですよね。紙の本ではなかなかできない、Web小説ならではの仕組みで、面白そうだなと感じました」
「神運営です。これならモチベーションアップになりそうです」
「実装されたら、かつて書いた3万文字の小説(もとはゲームシナリオなんだが)もここに公開するか...」
などと期待の声があがった。また、投稿者が広告収入を得られるプラットフォームとして、
「ウェブ小説プラットフォームの、時代の流れを感じますね。YouTubeでは当たり前の事を小説投稿サイトが導入を試みる事は、他のサイトが更に続く後押しになります。YouTuberの様な専業作家が、この形態で増えれば業界が活気付く事にも繋がりそうです」
と考えるユーザーもいる。
「究極の目標」は?
KADOKAWAの担当者は4月3日、J-CASTニュースの取材に今回の仕組みについて
「この先もユーザーの皆さまに創作活動を続けていただくために、どのようなサポートができるかを考えた時に、自然と選択肢として浮かんできました。常に執筆者と向き合い続けている出版社の運営するサイトとして、書籍ビジネスが構造変化を迫られている中、『書籍化』以外にもどういう価値を提供できるかを常に考え続けていくのがサイトの使命と捉えています」
と明かす。「小説を書くことを続けるための補助ができる取り組みにしたいと考えています」という。
その上で「カクヨム」の今後については、
「究極の目標は、小説に限らず、日記や論文など総合的な文章のプラットフォームとして、さまざまな文章をカクヨムに投稿して頂き、どんなにテーマが深くてピンポイントだとしても、求めている読み手がきちんとその作品と出会える場を目指しています」
と描いている将来像を明かした。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)