モスクとレストランを異文化交流の場にしたい
菅原さんが話すように、気仙沼では以前から遠洋マグロ漁船の船員や水産加工場で、インドネシアの人が働いてきた。気仙沼市によると、2018年11月末でインドネシアからの技能実習生は171人になる。
採用には菅原さん自身、現地に足を運んで直接面接する。「日系企業に勤めたい」「日本で身に着けた技術を帰国後に生かしたい」という積極性を重視し、建設業の経験は問わない。2015年の「1期生」3人は当初、ゴミの分別に慣れず苦労したそうだが、2期生以降は先輩が面倒を見ている。また来日前からSNSで気仙沼の実習生と「友達」となり、情報収集をしている。日本語が話せるので社員とはすぐに打ち解け、業務中はもちろん、一緒に食事に行きコミュニケーションをとっている。仕事熱心で、「3年目にもなると、現場の主力メンバーです。メモ帳を持って技術を貪欲に吸収しようとする姿勢が見られます」(菅原さん)。
菅原工業では2017年、インドネシアで製造業の会社を立ち上げた。道路を剥がしたアスファルト殻を砕いてリサイクルする事業で「インドネシアでは初めて」だという。さらにコンサルタント業務を行う事務所も開設した。いずれも、技能実習生がインドネシアに帰国後、日本で学んだ技術や語学を生かして仕事ができる場にと、菅原さんは考える。
気仙沼市内では、イスラム教徒(ムスリム)が多いインドネシア人実習生のためにモスクの建設とインドネシアレストランの開店準備を進めている。現在、最も近いモスクは仙台だが、車で2時間かかる。また日本暮らしが長引けば「ふるさとの味」が恋しくなることもあるだろう。こうした生活面の配慮に加え、菅原さんには「モスクやレストランができれば、そこが地元の日本人とインドネシアの若者が異文化交流できる場になる」との構想がある。
2020年の東京五輪・パラリンピックで気仙沼は、インドネシアの『復興「ありがとう」ホストタウン』に選ばれた。五輪選手や大会関係者と地元住民が交流する企画だ。五輪では、外国人観光客の増加も期待される。大勢のインドネシア人やムスリムの人たちが「モスクのある気仙沼」に観光に訪れて欲しいと、菅原さんは望む。
(J-CASTニュース編集部 荻 仁)